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児童精神科医が語る「親の愛情不足」への誤解 いま「特定の他人との信頼関係」が足りない

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小澤:私は以前、研修でカナダのオンタリオ州にあるトロントという都市に滞在していたんですが、そこではまさに包摂を社会でつくっていこう、という取り組みをやっていて。妊娠するとまず「Nobody's Perfect」(完璧な人なんていない)というタイトルの冊子が配られるんです。親って初めから親なわけじゃないので、あなたは完璧じゃなくていい、こういうときには助けを求めていいんだよ、子どもはみんなで育てましょう、ということが書いてあるんです。

紫原:これから出産しようというときに読むととても勇気づけられますね!

小澤:そうなんです。子育ての具体的なレクチャーが受けられるプログラムも充実していますし、出産後に気軽に子育て相談に行ける、ファミリー・リソース・センターという施設も用意されています。

それから、フィンランドには有名なネルボラという制度もありますね。通称“ネルボラおばさん”といわれる人が、妊娠期間中から担当としてついてくれて、頻繁に訪問してくれるんです。ネルボラおばさんは、妊娠中の悩みから出産、産後の子育て、経済事情まで、何か困ったことがあればすべての窓口となってくれます。

紫原:それいいですね。考えてみると、出産してからはとにかくわからないことだらけですよね。でも、親となった以上、「わからない」「できない」は許されないんじゃないかという思いが漠然とあって、わからないことを誰かに聞くにも勇気がいる。その点、生まれる前から信頼関係が築けていると相談しやすいですね。

大人にも特定の他者との信頼関係が必要

小澤:ええ。担当が変わらないということがすごく大事で。日本でもこういったワンストップを実現しようとしている自治体もありますが、基本的には行政には異動があるので、担当が変わってしまうことが多いです。でも、毎回初対面の人に1から話すのは大変だったりしますよね。子どもの成長に必要なのと同じように、私たち大人にも特定の他者との信頼できる関係が必要ではないかと思うんです。

紫原:とはいえ日本だと、子育てのノウハウは基本的には親子間で受け継がれるべきもの、という意識が強いような気がします。家族の中で完結させなければいけない、と。でも、現実には近すぎる関係だからこそ余計にストレスになることもあるんですよね。

小澤:もしくは、遠くに住んでいて親を頼れない、なんていう場合もありますしね。核家族化が進んで、利害関係なく親子を見守り、子どもの成長を促していけるような人が少なくなっていると思います。

子どもの成長に特定の大人との愛着形成が必要だから、養育者がより余裕を持って子育てできる環境を外側からサポートする。家族の外側から、家族を包摂する仕組みを作ることが大切だと思うんです。

(後編に続く)

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