「高血圧」を放置した人に訪れる想定外の不幸 「自ら動かなければ」最新医療の恩恵はない

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自分から能動的に医療にかかわる意識(私は「医療リテラシー」と呼んでいます)が、他の先進国に比べて日本は高くないと私は考えています。たとえばアメリカなどは、国民皆保険で診療を受けられませんので、一人ひとりが民間の医療保険に加入して自分の医療費をコントロールします。そのため、健康管理や早期治療は自己責任という文化が強く根付いています。

医療はもっと「身近で自分で選ぶ」ものになる

一方で、こうした人たちがきちんと治療し続けるための「通院しやすい仕組み」は、これまでの医療に存在しませんでした。しかし、最近では、インターネットやスマホの普及を生かすことで「待ち時間は長いもの」という医療業界の常識が変わりつつあります。オフィスや家庭から、PCやスマホで医師の診療を受けられる“オンライン診療アプリ”が登場しています。

オンライン診療を行うシステムを導入している医療機関において、高血圧など症状が安定している病気についてはビデオチャットで診療を受けることができます。

対象となる疾患も、高血圧などの生活習慣病のほか、小児ぜんそく、アレルギー性皮膚炎、骨粗しょう症など、さまざまに広がっています。オンライン通院を取り入れることで、禁煙治療における通院継続率が上がったというデータが出ており、医療の質を高める効果も期待されています。

数年前からウエアラブルデバイスが普及し、iPhoneの「ヘルスケア」機能などのアプリが登場したことで、自分の健康を意識して管理する人は増えつつあります。オンライン診療のように通院スタイルを多様化するサービスも登場しており、「難しいもの」「病気になるまでは無縁のもの」だった医療の世界は、テクノロジーの力を借りて少しずつ身近になりつつあります。

日本では、病気になったら原則的に3割負担(高齢になると1割負担)の保険診療で治療を受けられますし、手術などの高額医療では9割以上が保険料や税金によって補助されます。これらはセーフティネットとして世界でも高い評価を受けているシステムではありますが、予防に対する意識を生まれづらくしているのも事実です。結果、「高血圧を放置しない」という基本的なケアすら半数の人が放置してしまうという現状が生まれてしまっているのです。

豊田 剛一郎 メドレー 代表取締役医師

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とよだ ごういちろう / Goichiro Toyoda

1984年生まれ。医師・米国医師。東京大学医学部卒業後、脳神経外科医として勤務。米国での脳研究成果は国際的学術雑誌の表紙を飾る。日米での医師経験を通じて、日本の医療の将来に対する危機感を強く感じ、医療を変革するために臨床現場を離れることを決意。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて主にヘルスケア業界の戦略コンサルティングに従事後、2015年2月より株式会社メドレーの代表取締役医師に就任。オンライン病気事典「MEDLEY」、オンライン診療アプリ「CLINICS」などの医療分野サービスの立ち上げを行う。

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