ANA、次の新規路線を決めるのは「B787」だ ハワイには大型機、マイルが使いやすくなる

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──昨年、ANAはベトナム航空に出資した。米国大手も中国の航空会社に出資するなど、近年は資本提携が目立つ。

「スターアライアンス」のような航空連合や他社との共同事業は、株を持たない提携だった。ただ世界経済の不確実性は高まっている。航空業界での資本提携は(外資規制があるので)子会社化ではなく少額出資にとどまるが、時代の流れなのだろう。今後主流になるかはわからないが、ある程度経営に入り込み、資本による強固な絆があれば、国の事情に左右されず長期の関係が築ける。

ベトナム航空はANAとの提携締結後、ANAグループから機内食の提供を受けるなど協業を進めている(記者撮影)

ベトナム航空は、国が同社の株を民間に放出するというタイミングでわれわれが手を挙げた。

ベトナムはインドシナ半島の中核国。現地の最大手と組むことで東南アジアに布石を打つ。コードシェア(共同運航)や空港業務受託など、広範な提携で相乗効果は出てきている。

JALを注視するが、競合は世界にいる

――国内を見れば、公的資金で再建されたJALの新規就航や投資を国土交通省が制限する通達(通称「8.10ペーパー」)が3月末に期限を迎えた。日本のライバルとしてどう向き合っていくか。

(ペーパーの効力が切れた後、)彼らがどのような戦略を仕掛けてくるか、非常に関心を持って見ていく。財務体質にはかなり格差がある。この格差を利用し、われわれからするとありえないようなことをやってきたとしたら、物申させていただく。

反面、JALだけがライバル企業ではない。JALだけを意識することなく事業を進めていくのが、今後の大きなポイントになるだろう。

平子裕志(ひらこ ゆうじ)/1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、全日本空輸(ANA)入社。レベニューマネジメント部長、ニューヨーク支店長などを経て、2015年6月からANAホールディングスとANAで取締役を兼務、CFO(最高財務責任者)に。2017年4月、ANA社長に就任(撮影:今井康一)

――平子社長自身が考える、戦略の参考にしたいエアラインはあるか。

米LCC(格安航空会社)のサウスウエスト航空はよい。社風がいい。客室乗務員が面白いアナウンスをするなど、ユーモアの精神に富んだ会社だと思う(笑)

ユーモアがなくなるとぎすぎすした会社になってしまう。そうした企業文化を参考にするのは非常に意義がある。

――ANAにはユーモアが足りない?

2~3年前に社内で盛り上がったものに、「ANAマジック」という言葉がある。お客様の満足を感動に変えるようなサービスを提供しようというムーブメントだった。

だがサウスウエストはそれがもっと進化したものを持っている。わざわざマジックと言わなくても、そういう精神が社員の中に浸透し、ユーモアが自然と出てきているのだから。

そういう意味では(この4月にANAホールディングスが子会社化したLCCの)ピーチ・アビエーションの存在は大きい。(関西ならではの)ユーモアを感じる社風だ。そのまま倣えとは言わないが、そういう発想で仕事をしてよいのではないかと思う。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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