さらに、社会保障給付の見通しを立てるうえで重要となる65歳以上人口比率(全人口に占める割合)は2015年の国勢調査では26.6%だったが、増加ペースが前回推計よりもやや緩和される結果となった。前回2012年の将来推計人口では2024年に30%を超え、2038年に35%を超え、2047年に38%を超え、2060年に40%を超え、2070年代以降は約41%で推移するとしていたのに対し、今回の将来人口推計では、2025年に30%を超え、2040年に35%を超え、2050年代に約38%となって、それ以降は同水準で推移するという。
75歳以上では医療や介護の1人当たり費用がより多くかかる。その全人口に占める割合は2015年の国勢調査では12.8%だったが、これも同様に増加ペースが緩やかになっている。前回2012年の将来推計人口では2020年に15%を超え、2025年に18%を超え、2035年に20%を超え、2051年に25%を超え、2060年代以降は約27%で推移するという推計となっていた。これに対し、今回の将来推計人口では、2021年に15%を超え、2026年に18%を超え、2039年に20%を超え、2055年に25%に達し、それ以降はほぼ同水準で推移するという。
2050年までの高齢化の進展はほぼ変わらず
つまり、高齢化のスピードは前回推計で見込んだよりも若干鈍化し、高齢者人口の割合が高くなるのもより遅くなるという結果である。高齢者の人口が全人口に占める割合が低いほど、社会保障財源の支え手がより多く、社会保障給付はより少なくて済む。21世紀の日本の財政負担は、5年前の前回推計に基づき予想していたほどは重くならない、といえる。
しかし、残念ながらその恩恵が及ぶのは21世紀後半、2050年代以降である。2050年代以降の高齢化の進展は前回推計ほど深刻ではないということが、今回の推計で明らかとなっただけであって、2050年までの30年近くは高齢化が進むことには、変わりない。今日、成人である人々は、高齢者が増えていくことに伴い、社会保障の財源負担が増えることと共存していかなければならない。
さらに、今回の将来推計では、"うれしい悲鳴"ともいえるデータが明らかになった。平均寿命の伸長である。
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