患者が医師の前で「ウソ」をついてしまう理由 医師とオープンに話し合える関係創りが大事

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さらに、医師が患者を従わせるような言葉は使いません。アルコールを止めなければならないアルコール依存症患者に対しても、「禁酒」という言葉を使うことはありません。その代わりに「断酒」といいます。禁酒には、医療者が禁じて患者はそれに従う者という意味がふくまれ、断酒は、患者自身がアルコールを断つ必要性を理解し、その意志を実行するという意味がふくまれるからです。

患者の主体性が大切だ

「この1カ月、運動はできていましたか?」
 「まあまあです」

これも患者とのやりとりでよく聞く答えです。ただ、医師に指示された運動を継続するのは難しいもの。自分がやっていて楽しいと思える運動、学生のときにやっていた好きな運動のほうが継続しやすいのです。そして、大切なのは日常生活の中でどれだけ体を動かせたか。なにも、スポーツウエアと運動靴で行うスポーツだけが運動ではありません。自分から、こんな運動ならやってみようと思えることを提案してみてください。ここでも患者の主体性が大切になります。どんな運動が継続しやすいかは、医師よりもあなたのほうが正解を知っているのですから。医師は運動の強度に関して何かいいアドバイスをくれるかもしれません。

慢性病の場合、多くは安静よりも適度な運動を必要としています。しかし、患者自身、そして家族も、場合によっては医療者までもが、病気なら安静が必要と短絡的に考えてしまっていることが多いのです。

高血圧、糖尿病、慢性肝臓病、慢性腎臓病、慢性肺疾患、慢性心不全――。こうした慢性病においては、薬の服用状況と食事や飲酒、運動など日常生活の過ごし方がとりわけ大切です。ほかの医師から出されている同様の効果の薬と重なってしまうこともありますし、薬剤が相互に影響をおよぼし合うこともあります。日常生活の改善によって、薬を減量することが可能になることもあります。

従って、服薬や生活の状況に関する情報を患者と医療者が共有することによって、よりよい医療・よりよい療養生活が実現可能となるのです。そのためには、患者と医療者が本音で対話できる関係性を創ることが、必要になっています。もし、外来では医師に話して伝えることが難しいと感じるのなら、伝えたいことを前もってメモ用紙に書いておくのも1つの方法です。

時代の変化に合わせて、医療者の側も患者の側も変化を必要とされているのです。若い世代の医師はすでにそのような変化が訪れはじめています。そして、患者と医療者がお互いに本音でオープンに対話をできる関係性を創るために、患者側にも変化が求められているのです。その変化に応じようとしている患者は、今確実に増えようとしています。

加藤 眞三 慶應義塾大学看護医療学部教授

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かとう しんぞう / Shinzo Kato

1956年生まれ。1980年に慶應義塾大学医学部卒業。1985年に同大学大学院医学研究科博士課程単位取得退学(医学博士)。米国マウントサイナイ医学部研究員、 東京都立広尾病院の内科医長、内視鏡科科長、慶應義塾大学医学部・内科学専任講師(消化器内科)などを経て、 2005年より現職。著書に『患者の生き方』『患者の力』(ともに春秋社)などがある。毎月、公開講座「患者学」を開催している。
 

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