「将来やりたいこと」を絞り込む必要はない 無数ある仕事を「定義」するのは自分だ

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その一方で、仕事を自分の趣味の延長としてとらえている人もいるでしょうし、単に生活費を稼ぐためにやっている人もいるでしょう。また経済産業省のような公的機関の職員として、幅広い分野で海外開拓支援などを通じて関与することが文化伝達に寄与していると考える人もいれば、特定の分野で現地に出店したり、輸出などを通じて現地に溶け込んでこそ、と思う人もいるでしょう。

これらはどれが正解ということでは決してなく、社会人であるがゆえに自分自身にとっての正解を突き詰めているわけですから、それぞれが信じる正解に向かって走ればいいわけです。同じ仕事であってもどのようなスタンスでその仕事に臨むかによって、本人の目線や目標、日々の頑張り、ひいてはどこまで成し遂げることができるかにもさまざまな違いが出てくることは確かでしょう。

さて、蟹江さんは「文化」と「伝達」という2つの視点で悩まれていますが、まずはそれぞれの切り口におけるご自身の中での定義や正解を考えることが先決です。

たとえば「伝達」のパートは、「誰に」「何を」「いつ」「どのような方法で」などなど、いろいろと構成要素がありますよね。そういった構成要素ごとに、ご自身として成し遂げたいことを鑑みて、あるべき姿を考えていくのもひとつの手でしょう。「誰に」や「何を」がわかると、「文化」という幅広い対象からもっと絞り込めますし、「どのような方法で」がわかれば職業もおのずと見えてくるはずです。

なお、対象を絞り込むと言いましたが、何も絞り込まず全般で行くのか特定分野で行くのかという、「面なのか点なのか」も考えるべき事柄ですよね。いずれにしても、蟹江さんがどう文化を定義して、どう伝達を定義するかにすべてはよるわけです。

逆に言うとこれこそが「文化伝達」の仕事だという、万人にとっての正解はないわけです。なぜならば、正解は自分自身がその仕事や対象をどう定義するかによって違ってくるからです。

ゼミで文化系のところに所属しているのであれば、先輩たちがどういった志を持ってどういった仕事をしているのか、そういったことを起点にリアルな仕事の選択肢を探していくのもありでしょう。

すべての職業人が考えるべきこと

ちなみに、これは今回のように「文化」という切り口に限った話ではありません。世の中に無数ある仕事をどう定義して、どのようなモチベーションで臨むかはすべての職業人が考えないといけないことです。

本連載でも何度も指摘していますが、やはり人生にもキャリアにおいてもすべての人にとっての正解があるわけではありませんから、選択を通じて自分にとっての正解を定義し、その正解に向かって走る勇気が求められるわけです。ない正解を誰かに教えてもらおう、探してもらおうというスタンスでは、その先の厳しい社会人生活を乗り越えることはできません。

今月よりフレッシュなリクルートスーツに身を包んだ新社会人を街で見掛ける季節になりました。彼らもぜひ、存在しえないユニバーサルな目標や正解というものを求めるのではなく、自分にとってのユニークな目標や方法、成功の定義を持ってもらいたいものです。

なぜならば、「正解のない世界で正解を創造する」ことこそが大人の人生というものだからです。

蟹江さんが、万人にとっての正解という青い鳥ではなく、蟹江さんにとっての正解、進むべき道を定義され、ご自身の考える成功を成し遂げられることを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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