「人を好きになる感覚」はこうしてよみがえる

結婚はビジネスのマッチングではない

インタビューに名乗りを上げてくれたのは秀美さんのほうだが、まずは俊之さんの話を聞きたい。3年ほど前にネット婚活を始めるまでは結婚願望はなかったのだろうか。

相手から頼られすぎる結婚は向いていない

「僕は高校時代まで自転車のクラブチームに入っていました。そんなに速いわけではなかったので、高校を卒業してからは運送業の事務職をしていたのですが、どうしても自転車に携わる仕事がしたくて……。25歳のときに今の自転車店の親会社に入って、37歳までは修業をさせてもらっていました。みんな自転車に没頭しているので、30代で独身の人はゴロゴロいます。僕も結婚には関心が向きませんでした」

ちょっと恥ずかしそうに、でもゆっくりと自分の言葉で話してくれる俊之さん。ときどき無邪気な笑顔を浮かべる。自転車にはあまり興味がない筆者でも「友達になりたいな」という気持ちにさせてくれる穏やかな男性だ。そんな俊之さんを仲間が放っておかなかった。

「のれん分けで開業させてもらうとき、みんなからアドバイスされました。店を開くならば結婚したほうがいい、パートナーがいたほうが生活がスムーズになる、と。何人かの女性を紹介してもらって会いましたが、仕事が忙しかったし楽しかったので本腰を入れることはありませんでした」

筆者も個人事業主なので、俊之さんが仲間から受けたアドバイスには納得する。配偶者に仕事を手伝ってもらうという意味ではない。仕事の中心である原稿書きは1人きりで行うため、生活ぐらいは誰かと共同作業をしたいのだ。妻が料理をしている間に、筆者が乾いた洗濯物を畳んだりテーブルをふいて食器を並べたりする。そして、出来たてのつまみでビールを一緒に飲む。お互いの仕事状況を話したりして、ちょっとした苦労は笑い飛ばす。食後は焼酎やウイスキーに切り替えて、録画してあるテレビ番組を一緒に見て、あまり遅くならないうちに寝てしまう。自然と規則正しくなるし、不潔になりすぎない。確かに生活が「スムーズ」になるのだ。

俊之さんが本気で婚活を始めたのは3年ほど前。仲間から独身者を紹介してもらうにも限度があり、「年齢も年齢だから本腰を入れよう。ネット婚活もありかもしれない」と感じたと振り返る。

当時、俊之さんは44歳。本心から結婚したくなる年齢は人それぞれなのだ。仕事が落ち着き、自活できていると感じたときに初めて、人を好きになる余裕が生まれることもある。ただし、その段階では相手にも自立心と余裕を求めたくなるのも人情だ。

「ネット婚活でもいろんな人と会いましたが、何か違うなと思っていました。僕は相手から頼られすぎる結婚には向いていません。僕自身も好きな自転車に没頭しているので、相手も自立していて好きな仕事や趣味がある人だと助かります」

秀美さんとの出会いも、有料のネット婚活サービスを通じたものだった。何度かメールでやり取りをして、実際にお見合いをした。初対面の印象は「お節介な人だな」だったという。

「若い頃から自転車に乗りすぎていたからか、僕は股関節が変になっているらしいんです。接骨院を経営している妻は歩き方を見ればわかるらしくて、改善法までその場で伝授してくれました(笑)。僕も自転車を見ればどんなふうに使われてきたのかすぐにわかるので、通じるものがあります。それにしても世話好きでお節介な人だなとは思いましたよ。もちろん、いい意味ですけどね」

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