出光・創業家の対立がヒートアップする事情 「昭和シェルとの合併阻止」で訴訟に発展も

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出光興産の創業家は一貫して昭和シェル石油との合併そのものに反対しており、条件闘争をしているわけではない。3分の1以上の議決権を持つ創業家が反対する以上、合併は不可能だ。出光の経営陣には合併以外の道を探ることを希望する。 

鶴間洋平(つるま・ようへい)/1971年生まれ。1996年3月慶応義塾大学大学院修士課程修了、2000年弁護士登録。2017年2月、出光創業家の代理人に就任(撮影:梅谷秀司)

株主総会までには経営陣が自発的に合併を断念してくれると思うが、そうならなければ、あらゆる手段を検討する。株主総会でどのような議決権行使をするか、結論はまだ出していない。

プロクシーファイト(委任状争奪戦)までやるのか、具体的に検討しているわけではないが、それ自体が話し合いによる解決を望んでいる創業家の意向に直ちに反しているとは考えていない。譲れないラインをきっちり設定することで、対話の接点を見いだせる場合もあるかもしれない。現時点ではあらゆる方法を排除しない。もちろん、話し合いによる円満解決を目指す基本姿勢は崩さない。

創業家の代理人として経営陣から説明を聞くことも拒否しない。ただ、会っても条件交渉はしない。合併の撤回が前提でないと創業家が経営陣と話す意味は乏しい。

(合併撤回の前提もなしに)「説明すれば創業家が賛成してくれる」と、もし月岡隆社長が考えているならば、これまで同様にそうはならない。販売店などステークホルダーや昭和シェルにとっても不安定な状態が長く続いており、これを安定化させる責任は創業家にもあると考えている。創業家も心配をかけていることに関して心を痛めており、創業家の考えを伝える必要性は感じている。

増資には差し止め訴訟で対抗

今のように出光が大量の昭和シェル株式を保有し続けることについては強い疑問がある。昭和シェルの子会社化など、合併とは違う提案が出てくれば、ゼロベースで検討し直す。出光がグループとして(販売店などを含めた大家族主義など)創業の理念を貫けるのかなどを細かく詰めて、よく検討する必要がある。

もし経営陣が第三者割当増資を実施して創業家が保有している議決権の比率を低下させようとすれば、株主(創業家)にとって「著しく不公正な方法」なので差し止め訴訟を起こす。

裁判所がそれを認めたとしても、創業家の持ち分はそうとう高いままだ。円満に話し合いで解決しないと大きなしこりが残り、出光にとってよくないことになる。(談)

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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