16年ぶり赤字、千代田化工に何が起きたのか 社運かけたプロジェクトがわずか1年で頓挫

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米国連邦破産法11条の適用を申請したECSが保有する海底工事船(写真:千代田化工建設)

プラント工事大手・千代田化工建設が2017年3月期、16年ぶりの最終赤字に沈む。液化ガス(LNG)工事では世界4強の一角を占める名門企業に一体何が起きているのか?

赤字の原因は、持分法適用会社・イマスチヨダサブシー(ECS)社向けの株式・融資に関連して368億円の費用・損失を計上するためだ。海洋ガス油田の海中・海底(サブシー)工事を行うECSは、2016年3月末に発足したばかり。シンガポールの新興海洋企業・エズラホールディングス傘下のサブシー会社に対し、千代田化工が1.8億ドルもの大金を出して50%出資した。同年9月には日本郵船が加わり、エズラ40%、千代田化工35%、郵船25%という現在の株主構成に移行。経営は盤石となったと見られていたが、蓋を開けてみればその中身はがたがただった。

成長戦略の目玉だった

LNGに代表される陸上・中下流プラント工事では屈指の千代田化工。だが、拡大が続いていた上流過程(ガス田や油田の掘削や開発、生産)の工事にはほとんど足場を持っていなかった。そのため千代田化工は、成長戦略の目玉として、上流過程の育成・拡大をブチ上げた。

現状、上流開発の舞台は陸上から海洋(オフショア)にシフトしている。海中・海底における設備工事では仏テクニップ、英サブシー・セブン、伊サイペムが世界3強。開発には高い技術力と豊富な資金力が必要で、特に深海の大型工事ではこれら3社の寡占状態にある。

ゼロからこの分野に参入する千代田化工にとって、M&Aでサブシー会社を手に入れる必要があった。千代田化工がいくら名門とはいえ、サブシーでは3強から相手にすらされない。ようやく見つけ出したのが、中堅のサブシー専門企業を傘下に持つエズラだった。

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