慶大教授が「弱者救済はやめろ」と言う理由 「現物ベーシック・インカム」が日本を救う

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井手:最後に残るのは生活扶助(衣食など日常生活に必要な需要を満たすための扶助)ですが、これはディーセントミニマム(品位ある保障)とすべきです。品位ある保障だから最低限では絶対ダメ。最低限というと、最低限のはずなのにどんどん引き下げがおきる。最低賃金を上げるのではなく、生活保護を切り下げるということが平気で行われる。少しでいい。「おカネを使う自由」を受給者に保障する。そんな理念があっていい。

普遍的ニーズをみんなに配れば、結果的に格差は解消されます。当初の所得が200万円のAさんと2000万円のBさんがいるとしましょう。それぞれに20%課税すると、Aさんの手取りは160万円、Bさんは1600万円になりますが、税収となった440万円のうち、AさんとBさんに200万円ずつ「サービス」で給付すれば、Aさんの最終的な生活水準は360万円、Bさんは1800万円となります。格差は10倍から5倍に縮まり、税収の残り40万円は財政再建に充てられる。

大切なことは、貧しい人も納税者になり、富裕層も受益者になる中で、格差を小さくできるということです。

「民主主義ってなんだ!」

奥田:医療や住宅、教育など人生や生活のベースの部分が、自分の現金の出入りとは関係ないところできちんと確保されるのはすごくいいアイデアだと思います。私は、今日(こんにち)の議論のステージが、あまりにも下の部分になっていると感じています。つまり、「あなたは何のために生きるのか」と問う余裕はなく、「どうすれば明日食えるのか」に留まってしまう。井手さんの言うようにベースが確保されることで、人は自分でもっと物事を考えて自由に決断できるようになる。「民主主義ってなんだ!」と問うためにも、このベースのところが普遍的に確保されないと自由な議論にならない。誰しも幸福追求ができる状況に社会が向かってほしいと思います。(後編につづく)

(構成:東洋経済記者 中島 順一郎)

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