オバマケアの廃止・修正に失敗した大きな理由は、代替法案によって何を目指すのかが不透明だった点にある。トランプ大統領が属する共和党には、オバマケアの廃止・修正によって、政府の財政負担を減らすべきとする勢力があった。その一方で、同じ共和党の中には、代替案においても、オバマケア時代から医療保険の加入者が減らないよう、政府としての支援策を講ずるべき、との声も根強かった。
相容れない要求を前にして、出来上がった法案は、どっちつかずの魅力のない内容にならざるをえなかった。肝心のトランプ大統領ですら、何度も「これは本当に良い法案なのか?」と周囲にもらすなど、最後まで疑心暗鬼だったという。
「オバマケア廃止挫折」が追い風に?
税制改革の狙いは、ハッキリしている。所得税、法人税の双方において、最高税率を引き下げ、大型の減税を行うことだ。税率の刻みを少なくし、租税特別措置を整理するなど、税制の簡素化を進めることでも、トランプ政権と議会共和党の狙いは一致している。
見方によっては、オバマケア是正法案での挫折も、税制改革への追い風になる。3つの点を指摘したい。
第1に、オバマケア是正法案が挫折したおかげで、トランプ政権と議会共和党は、早々に税制改革の議会審議に臨めるようになった。議会規則の関係上、オバマケア是正法案の議論にカタがつかない限り、議会は税制改革の議論に移れない。結果はともかく、オバマケアをめぐる議論が長引けば、それだけ税制改革の議会審議は、遅れざるをえなかった。
トランプ政権が早々に敗北を認めたことは、税制改革にとっては不幸中の幸いだった。税制改革以外にも、トランプ政権と議会には、こなさなければならない課題がある。グズグズしていると、どんどん税制改革は後回しになる。
まずは、予算の問題がある。4月28日には、2017年度の暫定予算が期限切れになる。また、9月末には、2018年度予算の成立期限が訪れる。いずれの局面でも、予算の成立が遅れた場合には、米国は政府閉鎖に追い込まれる。
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