今の日本の経営者は、しょうもなさすぎる テラモーターズ徳重社長、イノベーションを語る(中)
サムスン社員のすごい粘り強さ
それから大事なのは「不確実な中での業務遂行能力」です。右も左もわからない中で、それでも最後にはなんとか話をまとめることです。特に新興国では、参考にできるデータはないのが普通だし、人によって言うことが全然違うので、何が正しいかわからない。でもその不確実な中で結果を出す。しかも現地の人を巻き込む、というのが海外の立ち上げなどでは重要なことです。
それから「意思決定者が現場感覚を持つこと」も、すごく重要です。
僕らの会社でもベトナムとかフィリピンに若い駐在員がいますし、これからインドにも置いて仕事を任せていきますが、その前に僕自身が10回くらいはその国に行って、事情に通じておくことが必要です。そうすれば現地とスカイプでやり取りするときも、話の意味がよくわかる。
話は外れますが、フィリピンのマニラである銀行の人に、「休みの日は何をやっているんですか」と聞いたら、「ゴルフです」。「どれぐらい行くのですか」と聞いたら、年100回だそうです。3日に1回行っているわけです。しかも日本人同士で。「そんなことしていて、東京の本社は怒らないのですか」と言うと、「いや、変な女に引っかかるよりは、ゴルフがうまくなってもらったほうが害がないと思われている」とか言うのです。「いや、すごいですね」と言ってしまいました。「ありえないな」という意味で言ったんですけれども(笑)。
一方で、僕たちはリチウム電池事業もやっているから、サムスンとかと付き合いがあるのですが、あの人たちはすごいですよ。今、サムスンとソニーはどれだけ時価総額が違うかわかりますか? もう10倍以上違いますからね。
僕たちがリチウム電池事業をやるとき、日本の大手メーカーやサムスンとか、いろいろなところに声をかけましたが、最終的に台湾の会社とやろうと思いました。だから「サムスンから折り返し電話がほしいと言っている」とメモがあっても、無視していた。それでも2回、3回とかかってきて、4回目があったんですよ。その人は韓国人ですけど、日本語がペラペラで、日本の大学も出ているから日本のカルチャーだってわかる。ということは望み薄だとわかっている。なのに4回、かけてきたんです。この粘り強さ。
僕はそれに感動して、それで結局、サムスンと組んだ。ほかにも感動したことはいろいろあるのですが、コミットメントしてくる力がすごい。酒だって朝の3時ぐらいまで付き合わされて、僕はタクシーで帰らざるをえなくなったりする。
その飲み会で僕がサムスンの人に、「何で日本の大企業、駄目なのですかね」と聞いたら、「日本のビジネスマンはやる気があるんですか」と言われた。いやあ、僕はすごくショックでした。でもまたそれが僕のエネルギーなんですね。ああ、彼らに負けないぐらい頑張らなくてはいけないな、と思います。