今の日本の経営者は、しょうもなさすぎる

テラモーターズ徳重社長、イノベーションを語る(中)

日本のすごい起業家たち

今の日本人は駄目ですが、昔の日本人はすごかったという話をします。

僕がよかったのは、大学受験のとき浪人していることです。僕は山口の田舎だったから300人の高校生のうち、2人しか浪人してなくて、本当に失敗者なのです。それで自分を立て直すために自己啓発の本をいろいろ読んだ。するとだいたい起業家の話が出てくる。たとえば三菱財閥をつくった岩崎弥太郎、財界のナポレオンといわれた金子直吉、東急をつくった五島慶太、阪急の小林一三。今もそういう人の話を読むのが好きです。特に僕はアジアで勝負しているので、置かれた状況も彼らと似ているんですよね。

最近は永野茂雄さんという方の自叙伝を読んでいます。古本で1万円ぐらいしました。この人は新日鉄の会長で経団連の重鎮だった方ですが、タイトルが「君は夜逃げしたことがあるか」ですよ(会場爆笑)。いや、彼は本当に夜逃げしてるんです。僕が生まれた頃の話なのですけど。

でもこれはちょっと前の日本で起こっていたことなんですよ。僕が大学の頃は永野さんもまだ健在で、彼の本も書店に並んでいた記憶がありますから。つまり昔は大企業の経営者に、いくらでもこういう人がいたのですね。

たとえばこの頃は日本が戦争に負けて、経産省の頭のいい人は、これからの日本の競争の源泉を考えたら何もないから、繊維業をやろうとした。でも永野さんたちが、「いや、そうじゃねえだろ。やっぱり重工業が大事だろ」。「鉄は国家なり」というように鉄が大事だと言って、設備投資をしようとするのですが、土地もないし、おカネもないし、技術もないし、設備も人材も何もない。ベンチャーと一緒です。

それで彼はどうしたかというと、当時、世界銀行がカネを持っていましたから、世界銀行の重鎮を引っ張り込んで、連れてきて、飲ませ食わせ、骨董品が好きだというのを聞きつけて、日本中から骨董品を集めてお土産にして、「お前、おもしろいやつだな」と言わせて、ついに融資を受けるのです。新日鉄の会長をやっていた人がそんな感じですよ。

でもそれは永野さんだけじゃなくて、ほかの大企業の偉い人もみんなそうだと思うのです。僕は75歳くらいの人から昔の話を聞くのが好きで、この前も元三井物産の副社長の方で住宅金融公庫か何かの代表までやられた方と話をしていたら、「お前、知ってるか。GHQが公職追放したから、三井物産でも新日鉄でも東レでも、全部、上がいなくなった。だから40代の人が社長をやったんだ」と言う。彼らが日本のために頑張ったんですよ。だから今がある。僕が思うに、日本を立て直した東芝の元社長だった土光敏夫さんとか、最近、亡くなられましたけどアサヒビールの樋口廣太郎さんとか、たぶんあの年代までは、戦後のスピリットを引き継いでいるんじゃないのかな。

でもその後の今の経営陣がしょうもなさすぎる。僕にはジャーナリストの友達もいて、大企業の経営者を15年追い続けたような人から直接話を聞くのですが、もう本当にひどいそうです。昔のリーダーはやはり自分のことよりも他人のこと、自分のことよりも組織のこと、自分のことよりも国のことまで考えていたけれど、今のリーダーは、失敗したら俺の年金カットされるんじゃないかとか、退職金がどうとか、そんな心配ばかりしている。普通の人はいいけど、リーダーはそれじゃ駄目でしょ、と思います。

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