試練の年迎える欧州、「崩壊」は避けられるか 実態はそれほど悪くないが…

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この数字は、欧州の極右が、どれほど苦戦しているかを示している。確かに欧州の左派は、英国の労働党やフランスの社会党の苦悩ぶりを見ればわかるように、混乱状態に陥っている。それでも、極右といえる政党が政権を握っているのは今のところ、ハンガリーとポーランドの2国にとどまっている。そして、こうした極右政党は、多くの人が楽に勝てるだろうと考えている選挙で結構苦戦している。ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相が昨年10月、今後欧州以外からの移民の入国を禁止することに関する国民投票を実施した際、禁止にできるほど票は集まらなかった。

もっとも、崩壊は免れたとしても、欧州は間違いなく半永久的な危機状態にある。ほぼ10年間、各国のリーダーたちは単一通貨や、EU改革といった問題を話し合うために1週間以上集まっては、危機回避のための「サミット」を開いているが、ここから何か有効な案が生まれたことはほとんどない。

欧州の不安定さを利用するプーチン

これは、リーダーシップの問題でもある。各国、そして、各地域で欧州の指導者たちは信用や人気を失い、最悪の場合は政治的合法性すら問われている。

こうした欧州の不安定な状態を、喜んで利用してきたのがロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。欧州と米国の安全保障関係者の多くは、ロシアによるシリア介入は、難民問題を悪化させ、欧州危機を誘発するためのものだったと考えているくらいだ。少なくとも、ロシアに支援された報道機関は、ときには話をでっち上げ、ときには単に話を誇張することで、すでに高まっている緊張感を増幅させ、不安定と過激主義を積極的にあおり立ててきた。

先月、米国のドナルド・トランプ大統領は、EUとその関連機関への支援を表明したが、これに対して驚く欧州関係者は少なくなかった。しかし、トランプ大統領周辺の多くは――とりわけスティーブン・バノン首席戦略官のようなイデオロギー信奉者は――EUを忌み嫌っており、EUが崩壊するのを待ち構えている。

欧州のそのほかの地域も、EUにとっては悪い話しかない。オランダとトルコは、ロッテルダムで開かれる予定で(中止された)トルコの政治集会をめぐって小競り合いを繰り広げている。この政治集会の参加者は、トルコのタイイップ・エルドアン大統領が、オランダをナチスにたとえているのを目にしていた。結果、オランダでは、極右政治家ヘルト・ウィルダース氏への支持を拡大させただけだった。ブリュッセルやニース、ベルリンなどでのテロは、たとえそれが単なるテロの疑いであったとしても、脅威が大げさに誇張され、分断をあおり立てるようになっている。

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