英国のEU離脱、まだ実現しない「本当の理由」 メイ首相が国民投票を覆す可能性も残る
昨年6月23日に英国で行われた国民投票。世界中が見守った世紀の審判で、英国の有権者は欧州連合(EU)離脱(=ブレグジット)を選択した。
だが、国民投票は「英国のEU残留か離脱か」を問うだけで、離脱の場合のプランを何も用意していなかった。そのため英国国民はそれぞれ勝手に、EU離脱後の英国を夢想することができた。共通通商政策に縛られないで自由に貿易ができる、ポーランドなど加盟国からの移民を規制できる、EU法規制と欧州司法裁判所の呪縛から解放される……。そのような夢想のおかげで離脱派は勝利したのかもしれない。
実際にはどうか。EU離脱を選んだ英国の対EU交渉目標の核は、第一に労働者(域内移民)の自由移動を除外すること、第二に物・サービス分野の単一市場へのアクセスを確保することだ。しかし、現在のメイ政権内では、EUに対する交渉目標をめぐり、”ハードな離脱派”と”ソフトな離脱派”の路線対立がある。
離脱通告から2年以内に協定を結ぶ
ハード離脱派は、EUから完全な主権回復を夢見て、単一市場にこれまでのようにアクセスできなくても、域内移民を規制することをめざしている。これに対しソフト離脱派は、経済的利益を重視し、少々妥協しても単一市場へのアクセスを確保するために軟着陸を模索している。
メイ首相はハードな離脱に舵を切ったと思いきや、日産自動車のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)から英国への新規投資を渋られると、クラーク産業戦略相を通じ、少なくとも自動車輸出には単一市場へのアクセスを優先させる考えを示唆した。もしアクセスできなければ、輸出に10%の関税が課される。まるでソフトな離脱に転向したように見えた。
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