試練の年迎える欧州、「崩壊」は避けられるか 実態はそれほど悪くないが…
2017年の3月は、欧州人にとって落ち着かない月だ。見渡すところほぼどこでも、今までの確かな根拠が、相次ぐ最悪の危機に直面して崩壊しようとしている。
3月16日、英国では欧州連合(EU)離脱手続き開始に向けた準備が始まった。これが引き金となってスコットランド独立の2度目の国民投票が行われることになるだろうし、今後は北アイルランドが英国から一段と離れると同時に、アイルランド共和国と一緒になったほうがいいという意見が増えてくるかもしれない。
欧州各地で保守化の傾向
フランスでは、マリーヌ・ル・ペン氏とその国民戦線が、今春の大統領選挙の第1回投票では、ほぼ間違いなく2位につけることだろう。たとえ中道派のエマニュエル・マクロン氏が、第2回投票で彼女を破ることが確実視されているにしても、だ。
欧州東部と北部では、ますます強引になっているロシアへの懸念が根強く残っている。スウェーデンは今月、ロシア政府からの脅威に対して、自国の軍隊を増強するために、2010年に廃止した徴兵制を再開すると発表した。この間、ずっと徴兵制を維持してきたフィンランドは、ハイブリッド戦争の技術についていくために、軍事演習を実施している。バルト三国は、NATOが冷戦以来最大の軍事配置の真っただ中にある。
欧州単一通貨の危機もなくなってはいないし、単一通貨は実際に、2008年の金融危機以来ずっと苦境にあり、新たな不安定な段階に突入しようとしているのかもしれない。おそらく早ければ6月のイタリア次期選挙では、この通貨圏に残ることに反対する政党への支持が増すことになるだろう。多くのイタリア人が、何年間も経済が成長せず、失業率が上昇しているのは、単一通貨圏にいるせいだと考えているからだ。
ただし、多くの有識者が示唆するほど急速に、すべてが崩壊しようとしているわけではない。ドイツでは、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、現状に対する不満が強い東部地域を中心に確実に勢力を拡大させている。しかし、AfDはまだ、9月のドイツ連邦議会選挙で、本格的な政治権力を握るには至らないようだ。最新の世論調査では、アンゲラ・メルケル首相のキリスト教民主同盟が支持率の34%、ライバルの社会民主党と、その次期首相候補のマルティン・シュルツ氏が32%を獲得しているのと比較して、AfDはかろうじて11%を獲得するに過ぎないと予測している。