WBC「侍ジャパン」がまたも決勝を逃した理由 落とし穴は雨に濡れた天然芝だけでなかった

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前日の練習で天然芝の状態は確認していたが、試合前はフィールドにシートが敷かれ、ノックができなかった。人工芝の東京ドームで1次、2次ラウンドを勝ち上がって渡米。アリゾナで天然芝に慣らしてはいたが、ぬれた芝はぶっつけ本番だった。

日程面のハンデもあった。2次ラウンド最終戦は15日。日本時間で言えば、準決勝まで1週間のブランクがあった。16日に渡米してアリゾナ入り。2次ラウンドまで6試合を戦った疲労に時差ボケが加わる。じっくり調整したくても、許してもらえない事情があった。

米国での調整が難しかったワケ

日中の気温が30度を超える中、米大リーグ(MLB)と同選手会が立ち上げた大会運営会社WBCIから練習試合2試合を義務づけられていたのである。MLBのエキシビションゲーム(オープン戦)に組み込まれた有料試合で、拒否はできない。カブスに4-6、ドジャースに2-3と連敗。勝敗はともかく、調整目的なら1試合で十分だった。

アリゾナとは気温も湿度も違うロサンゼルスに移動し、ドジャースタジアムで1日練習して迎えた本番。米国に来ての初戦がいきなり「負ければおしまい」の準決勝だ。相手は3日前、ロサンゼルスから車で約2時間のサンディエゴで前回優勝のドミニカ共和国を破って勝ち上がってきた米国。勢いという点では大きな差があった。

2006年の第1回、2009年の第2回大会は1次ラウンドだけ東京ドームで開催された。1次ラウンドを勝ち上がってアリゾナで調整。天然芝の球場に慣れ、2006年はアナハイム、2009年はサンディエゴで2次ラウンドを戦った。

アウェー感あふれる中でチームの一体感を高めていき、2006年はサンディエゴ、2009年はロサンゼルス、2次ラウンドと同じ西海岸で行われる決勝ラウンドに進んで頂点を極めたのである。

前回2013年の第3回大会からパターンが変わった。1次が福岡のヤフオクドーム、2次が東京ドーム。2次ラウンドまで日本開催になったのだ。決勝ラウンドは今回同様アリゾナ経由でサンフランシスコに入り、準決勝でプエルトリコに1-3で敗れた。

今回は1次、2次とも東京ドームでやってロサンゼルスで……。つまり日本は2次ラウンドから米国で戦った2大会はいずれも優勝し、2次ラウンドまで日本で戦った2大会は渡米初戦の準決勝で敗退したことになる。

日本だけじゃない。東京ドームでの2次ラウンドを2大会連続で勝ち上がったオランダも準決勝でいずれも敗退。2次ラウンド東京勝ち上がり組は1度も決勝に進めていないのだ。

小久保監督は「日程は決められたもので、どうのこうの言えない」と話したが、直前調整の難しさを考えれば、その差は歴然である。

どうして2次ラウンドまで東京開催になったかというと、それはジャパンマネーが関係している。第1回大会から1次ラウンド東京プールの興行権を読売新聞社に譲渡していたWBCIだったが、第3回大会からはさらに2次ラウンドまで売るようになったのだ。

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