甲子園連覇狙う作新学院「考える野球」の真髄 なぜ、「送りバント」があれほど少ないのか

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昨年の高校野球「夏の甲子園」大会で、54年ぶりの優勝を決めて歓喜するエース・今井達也ら作新学院の選手たち。今年のセンバツには、夏春連覇がかかっている(写真:日刊スポーツ/アフロ)

今年も高校野球ファンが待ちに待った球春がやってきた。きょう3月19日から甲子園球場を舞台に「センバツ高校野球」が開幕する。大会で最注目校の1つが、昨夏の甲子園で54年ぶりに優勝し、1983年春の池田(徳島)以来となる34年ぶり史上5校目の「夏春連覇」を狙ってセンバツに乗りこむ作新学院(栃木)だ。

チームを率いるのは、小針崇宏監督。昨夏の甲子園では33歳と参加監督の中でも最年少ながらも、選手起用などで巧みなベンチワークを駆使。明徳義塾(高知)など強豪校を次々と破り、決勝では北海(南北海道)を7-1の大差で下して優勝を果たした。

小針は野球界でも名門の筑波大学を卒業後、2006年に23歳で作新学院の監督に就任、26歳で高校野球史上、最年少でチームを甲子園に導いた。2011年から、夏は6大会連続で甲子園出場。栃木県内で苦杯をなめることが多くなっていた作新学院を再び、押しも押されもせぬ強豪校へと押し上げた。今年のセンバツを控えて、就任11年目で夏7回、春1回、甲子園の土を踏んでおり、現時点でも"名将"と呼ぶに十分な軌跡を残している。

「失敗」を深く考え、糧にする

実は、昨年全国優勝を果たしたチームの下馬評は決して高くはなかった。確かに、新チームで臨んだ一昨年の秋の県大会はベスト4、昨春の県大会はベスト8と、県レベルでも特別に強かったわけではない。

そんなチームが急速に力を付けていった背景にあったのは、エースを育て、チームを1つにまとめ上げた小針の丹念な指導だった。33歳で高校野球の頂点にチームを導いた若き監督は、どのように選手と接し、どのような「マネジメント」を行ったのか。

小針は「野球は失敗を重ねるスポーツ。だから、ミスは起こるものという前提に立ったうえで、試合でどのような成果が出たのかを重視しています」と言う。「それがホームランでも、凡打でも『なぜ、その結果になったのか』。それを自分たちで考えさせるようにしています。そして、失敗が成功につながるという体験を大事にしています」。小針は自身の野球哲学をこう語る。小針が「失敗」を糧にする大切さを説くのは、自身が通ってきた道でもあるからだ。

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