荒波直撃の印刷業界 挑戦続く“脱紙作戦”

川上・川下に展開可能 培った実力生かせるか

三方から押し寄せる荒波で、各社は既存事業を見直さざるをえない状況に追い込まれたといえる。業界リーダーの大日本と凸版は早くからエレクトロニクス分野を中心に多角化を推進していたが、いまや中堅クラスでも周辺事業や別事業に進出する必要に迫られている。「多角化は業界をシュリンクさせないための各社共通の課題」(山内専務理事)だ。

ただ、多角化といっても一筋縄にはいかない。進出先の市場には多くの場合、先行企業がいる。業界4位の共同印刷は、多角化の一つとして大学などを対象とする「学修支援システム」を手掛ける。学生がネットなどを通じて講義要項の閲覧や履修登録などを行える仕組みだ。講義要項の印刷物受注から派生した周辺事業だが、「受注の際はコンピュータ会社と競い合う場合も多い」(高羽周・eビジネス推進本部部長)という。他業種の企業と互角に戦えなければ、多角化はおぼつかない。

新事業には従来の枠にとらわれない発想も求められる。が、「印刷会社の社員は発想することや提案に不慣れ」(業界関係者)との声もある。業界では「イエスマンほど優秀な営業マン」と見られる風土があった。新事業を進めるには、顧客の要望をひたすら聞くだけの受注型営業から脱し、提案型営業へと社員の意識改革を進める必要がある。

「印刷業界は川上や川下にビジネス領域を広げやすい自由な業態」(JPモルガン証券・尾脇庸仁シニアアナリスト)との指摘もある。既存の印刷事業で培った技術やノウハウを生かして、どう経営の舵を切るか、が各社に問われている。

(許斐健太 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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