長距離以外の選手も全日本実業団選手権には出場できないが、村上幸史、右代啓祐、中村明彦、新井涼平、川元奨、海老原有希など、スズキ浜松ACには、世界大会に出場経験を持つ選手が所属している。「世界」を目指すことに特化したスケールの大きなクラブチームといえるだろう。
安藤は“金メダルルート”に乗れるのか!?
名古屋で初マラソン日本最高記録&日本歴代4位の2時間21分36秒をマークした安藤友香は、2020年東京五輪での活躍が期待される選手だ。現在の力では、3年後の「メダル」に届かないかもしれないが、今後さらに成長する可能性は十分にある。そこで、高橋尚子(シドニー五輪)と野口みずき(アテネ五輪)がたどってきた“金メダルルート”と比較してみたい。
高橋は大学卒業から2年目となる1997年1月の大阪国際で初マラソン(2時間31分32秒)を経験すると、翌年3月の名古屋国際で日本最高(当時)の2時間25分48秒、同年12月のアジア大会でアジア最高記録・世界歴代5位(当時)となる2時間21分47秒とタイムを大幅短縮。2000年9月のシドニー五輪で金メダルに輝き、翌年9月のベルリンで2時間19分46秒の世界最高記録(当時)を樹立した。
野口は高校卒業5年目となる2002年3月の名古屋国際で初マラソンに挑み、2時間25分35秒で優勝。翌年1月の大阪国際で2時間21分18秒の日本国内最高記録、同年8月のパリ世界選手権で銀メダルを獲得するなど、着々とキャリアを積み上げた。そして、2004年夏のアテネ五輪で金メダル。翌年9月のベルリンで世界歴代3位(当時)&アジア記録の2時間19分12秒をマークしている。
安藤は野口と同じく高校卒業5年目でマラソンに初挑戦。デビュー戦は野口のタイムを約3分上回ったが、野口と高橋は2戦目に記録を大幅に伸ばして、3戦目は国際大会で活躍した。安藤の場合は2戦目が世界選手権になるため、ロンドンではトップ集団でレースを進めて、世界レベルのレースを経験しておきたいところ。その次のマラソンでタイムを短縮して、2年後のドーハ世界選手権でメダルを獲得することができれば、金メダルルートに乗れるかもしれない。
名古屋で安藤が好タイムを刻んだことの、女子マラソン界への波及効果は大きそうだ。マラソンで2時間22~23分台のタイムを持つ前田彩里(ダイハツ)と小原怜(天満屋)。昨年のリオ五輪にトラック種目で出場した鈴木亜由子(日本郵政グループ)、関根花観(日本郵政グループ)、上原美幸(第一生命グループ)など、東京五輪を30歳以下で迎えることになる26歳以下の世代には楽しみな選手が多いからだ。トラックで安藤以上の走りを見せてきた彼女たちが、「私もできる」とプラスにとらえてマラソンに挑戦することで、さらなる好タイムが続出する可能性もあるだろう。
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