「テロ対策特別措置法」期限延長の問題は、国際貢献のあり方から議論すべし【1】
「テロ特措法」は自衛隊の後方支援を定めた法律
インド洋等で活動する米軍や英・仏軍などに給油・給水を自衛隊が行う根拠法である「テロ対策特別措置法」(以下、テロ特措法)が、2007年11月1日で期限が切れます。民主党は、本法の延長に慎重な態度を示しており、この国会では、テロ特措法への対応が大きな議論を呼びそうな状況です。
本稿では、アフガニスタンの平和構築の枠組みと、アフガニスタンの現状(客観的に見て平和構築は失敗しつつあります)を説明するとともに、わが国のテロ対策への貢献および包括的な国際貢献の理念について議論していこうと思います。
わが国の憲法前文には、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という国際貢献の理念が掲げられています。私は、日本はその理念に従い、世界中の人々が暴力の恐怖や食料や医療の欠乏から解放されて平和に生活できるように、国際貢献を行うべきだと考えています。そうすれば、同じく憲法前文にある「われらは……国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」という理念も実現できるでしょう。
では議論の中身に入りましょう。そもそも「テロ特措法」とはどのような法律でしょうか。
2001年9月11日の同時多発テロ(ニューヨークの世界貿易センタービルに飛行機がぶつかった映像を皆さん記憶されていませんか)に対し、アメリカは個別的自衛権を発動し、英軍など多国籍軍は集団的自衛権の発動としてアフガニスタンで軍事活動をしました。その多国籍軍に給油や給水といった後方支援を自衛隊が行うために定めた法律が「テロ特措法」です。
米国で同時多発テロが発生し、10月7日には、米英は、テロ実行グループのアル・カーイダを庇護していたとされるアフガニスタンのタリバン政権に武力攻撃を開始しました。日本政府は、10月5日には「テロ対策特別措置法」案を閣議決定し、国会に提出しています。テロ特措法案は、テロの発生から25日という短期間のうちに国会へ提出されているのです。すごいスピードです。
法律の正式名称は、「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」。なんと112文字の法律名です。公布・施行は2001年11月2日、当初は2年間の時限立法として成立し、その後、2003年に2年間の延長を決定。2005年10月にまた1年間、2006年10月にも再び1年間の延長を実施しています。
自衛隊が海外で活動するための法律としては、PKO協力法(国連平和維持活動協力法、1992年成立)、周辺事態法(1999年成立)がありました。しかし現在、国連のPKOは存在しないため、PKO協力法は適用できません。また周辺事態法はアメリカとの協力を前提としており、多国籍軍への支援はできません。そもそもアフガニスタンでの事態を「周辺事態」と認定すること自体もできません。こうした理由により、アフガニスタンの多国籍軍を後方支援するための新たな法律を作ったというわけです。