トランプ演説は「市場の信頼」をつなぎとめた 「有言実行政権」の看板は維持されている
トランプ米大統領の初めての施政方針演説が2月28日夜(現地時間)、米議会の上下両院合同本会議において行われた。トランプ氏は「法人税率を下げる歴史的な税制改革を進めている」と表明し、1兆ドル規模のインフラ投資法案への協力を議会に要請した。
演説は「想定内」だが、市場の信頼をつなぎとめた
そのうえで、「米国経済のエンジンを再起動する」とし、選挙戦から言い続けてきた政策の実行を約束した。さらに、同様に、医療保険制度や移民制度の改革にも取り組むとした。トランプ政権は公約通り、約30年ぶりとなる大規模な税制改革に乗り出すことになる。「企業寄り」とも言われる減税を行うことで、米国企業の国外流出を防ぐ一方、米国民の雇用を創出する方針を明確にした格好である。そのうえで、「中間層への巨額減税を実施する」とも言明、国民向けの減税にも取り組むとした。
今回の演説では、語り口はかなりマイルドな印象だったが、その内容は従来の主張を繰り返した格好だ。一部には、演説で数値も含む具体的な方針が示されるとの期待もあったようだが、筆者はさすがに演説でそこまで踏み込むことはないとみていた。
結果的に、今回のトランプ氏の演説は想定の範囲内だったといえる。昨年11月の大統領選で勝利して以降、トランプ政権の減税や規制緩和などの政策への期待から、株価は大きく上昇してきたが、この方針が実行されれば、米国経済は長期的な景気拡大が見込まれ、その結果、株価の上昇基調は続くと考えられる。
また景気拡大がマイルドなペースになれば、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げのペースが早まることはないだろう。その結果、ドルの上昇も抑制され、米国株式市場にとっては歓迎すべき市場環境が続く可能性が高い。
では、実効性は果たしてあるのだろうか。税制改革に関しては、ムニューシン米財務長官は、「非常に重要」とした上で、「議会が8月の休会前に承認することが望ましい」との考えを示している。またトランプ政権として、国境税の問題について検討を重ねているともしている。現実的には、8月までに税制改革に関して承認が得られる可能性は低いとみられるが、トランプ政権が「有言実行政権」とみられているうちは、市場の期待感は維持されるだろう。
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