米国民を洗脳し続ける「コーク兄弟」の真実 私的ネットワークが暗躍する共和党の裏側

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通常、われわれが知ることのない、アメリカ政治の一面には……(写真:rabbit75_pix / PIXTA)
これは「陰謀論」ではない。米国で起きている「現実」である。
「注目すべきノンフィクション2016」(ワシントンポスト)、「ベストブック2016」(ニューヨークタイムズ)に選出された話題の書『ダーク・マネー』が、このほど邦訳された。
米国を支配する「大富豪たちの私的なネットワーク」の全貌を明らかにした本書の読みどころを、東洋英和女学院大学客員教授の中岡望氏に解説してもらった。

共和党をカネで乗っ取ったコーク兄弟

『ダーク・マネー』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

コーク兄弟の思想と活動を理解しないと、本当の意味でアメリカの政治は理解できないと言っても過言ではないだろう。コーク兄弟とは総合資源会社であるコークインダストリーズの所有者であり、それぞれが資産430億ドルを持つ大富豪で、『フォーチュン』の富豪ランキングの上位につねに名前を出す人物である。

本書では、コーク兄弟が「われわれの運動は現状の国家統制主義者のパラダイムを破壊しなければならない」と宣言し、「この目的のために並外れた長期的な思想闘争」を行っていると指摘する。読者の誤解がないように説明すると、「国家統制主義者」とはリベラルな民主党の政府のことを指す。

コーク兄弟は、市場絶対主義者であるリバタリアン思想の信奉者で、リベラルな政治は企業活動や市場、市民活動を規制しているとして、その規制の解除を目指している。

著者によると、この長期目標を達成するために、コーク兄弟は「無関係に見えるようなシンクタンク、学術プログラム、多種多様な支持団体のネットワークに補助金を投入し、自分たちの意見を全国的な政治論議に割り込ませた。ロビイストを雇って、議会で自分たちの利益を推し進め、政治運動員を雇って、現場での政治運動を勢いづけるまやかしの草の根運動集団を作り上げた」という。

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