英紙、有料会員が1年で13倍になった理由 ガーディアンのノーガード戦法とは?

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ガーディアンによるドナルド・トランプ報道は、アメリカのオーディエンスからの寄付の駆動力となった。「アメリカのオーディエンスに対して我々が行ったリサーチによると、私たちのリベラルな価値観と、私たちが外部から加えていたグローバルな視点を評価してくれたようだ」と語るのは、メンバーシップのエグゼクティブ・エディターであるナタリー・ハンマン氏だ。

読者たちとの関係構築

特にアメリカと英国の読者たちと、より深い関係性を築こうとガーディアンは狙っている。あまり報道されていない分野を積極的にカバーすることは、そのために彼らが尽力していることのひとつだ。「約束」と題されたシリーズはその例だ。このシリーズでは、オバマ元大統領を2度支持したあと、トランプ現大統領を支持したペンシルバニア州ノーサンプトン郡といった地域に焦点を当てている。

選挙の前、ガーディアンは読者たちから何をレポーターに報じて欲しいかフィードバックを募集した。その結果生まれた報道のなかには「ミドルタウンからの眺め:大統領選挙に関するギャリー・ヤングの独自な視点」や「労働とリバプール:政党の亀裂を見せる街」がある。

それでも、一般的に言ってオンラインのコンテンツのためにおカネを払わせるのは難しい。この勢いを保つことは至難の業だろう。

だが、もしもガーディアンが2019年までに100万人の有料会員数に達したら、3年以内に読者からの収益を3000万ポンド(約42億2000万円)から6800万ポンド(約95億7000万円)へ倍増するという野望が実現可能な範囲に見えてくる。この計画は去年、発表された。もしも100万人の会員が1年間に最低額のプランである年60ポンド(毎月5ポンド)を支払った場合、収益はこれだけで6000万ポンドになる。

メディア分析企業エンダーズのダグラス・マッケイブCEOは、アメリカではニューヨーク・タイムズ、イギリスではタイムズ、ガーディアンといった質の高いニュースサービスに対する会員数増加の傾向が明らかに見られると指摘する。

「国内外における、政治的・経済的な進展が加速することで、信頼できるブランドが提供する質の高いニュースの価値に対して、消費者たちはどんどんと自覚的になりつつある。不安定な状況のせいで、人々はより従事し、コミットするようになっている」と、彼は付け加えた。

Jessica Davies(原文 / 訳:塚本 紺)

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DIGIDAY[日本版]編集部

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