ラーメン「一風堂」が上場で直面する成長の壁 時価総額は約60億円、成長戦略を描けるか
同社の業績は好調のようにも見える。だが、公表された有価証券届出書には、2015年3月期と、2016年3月期という2期分の連結決算しか記されていない。
有価証券報届出書には過去の業績推移を記載する必要がある。同社の場合、途中で連結決算に移行したため、2011年12月期~2013年12月期は単体決算が、2014年3月期については3カ月の変則決算が掲載されており、長期的な業績の比較が難しい。収益性にも不安が残る。記載されている経常利益は単体から連結を含んでもほぼ横ばいだ。
海外事業を拡大させる計画
こうした点について会社側は「持株会社への移行と上場準備を本格的に始めたのがこの時期で、2014年から連結決算体制に移行したため」「2015年3月期は国内の出店費用、2016年3月期は欧州を中心とする海外の投資先行の影響で利益が下がっている」と説明する。
収益のほとんどを稼ぎ出す、国内の店舗数は増加傾向にあるが、基本的に出店ペースはゆるやかだ。人口も縮小していく中で、立ち呑み形式の「一風堂スタンド」といった新業態の開発と、「のれんわけ制度」を拡大戦略の中核に据えている
のれん分けとは、同社から独立して店舗オーナーとなる制度であり、業務委託の形で「一風堂」店舗を運営する。国内27店ほどがのれん分け店である。異動がある本社社員と違い、地域密着の店舗運営ができるとする。
一方で成長の柱と見込むのが海外事業。麺をすする行為にかけて「Zuzutto」(ずずっと)という文化を世界に広めていくことをテーマに、2020年に海外200店舗を目指している。調達する資金の使途を、パリやロンドンの出店費用としているのもこのためだ。
63店舗中、最も多い中国でも15店程度。残りニューヨークやロンドン、シンガポール、パリ、オーストラリアといったエリアは数店舗ずつを展開するにとどまる。特に欧米の旗艦店舗では日本とは異なり、ほぼフルサービス式でラーメンの価格も1杯1500~1800円程度と倍の価格で提供している。
さらに、文化や嗜好の違いに合わせて、各国ごとにレシピを変えているという。地域毎に収益のとれるビジネスモデルを確立するには時間がかかりそうだ。
株式公開をするからには、外部の厳しい目にさらされ、成長を続ける必要がある。はたして一風堂はその重圧に耐えられるのか。まずは3月9日にも決定する公開価格が最初の試練となる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら