よほど景気がよくないかぎり、消費税を上げた後は、高い確率で景気が失速します。給料が上がらずに消費税だけ上がるというのは、実質的に所得が減るのと同じですからね。また、増税前は駆け込み需要が起こりますが、その後の反動が大きいのです。
消費税増税、そして景気の見極めという点からも、「現金給与総額」と「物価」の動き、特に輸入物価の動きには注意が必要です。
円安に振れても輸出が増えず、貿易赤字が続いている
もうひとつ注意すべきなのは、貿易収支の動向です。「貿易・通関」の数字を見ますと、1年ほどずっと貿易赤字が続いていることがわかります(下表)。
円安が始まりかけたころは、貿易収支における「逆Jカーブ効果」が起こると言われていました。「逆Jカーブ効果」とは、円安に振れ始めた頃は、エネルギーなどの輸入はドル建てが多いので、輸入額のほうが先に増え始めますから、最初は貿易収支が悪化します。
その後に円安のよい影響が出てきて輸出額が増えるため、少しずつ貿易収支が改善していくのです。このような動きを、縦軸を貿易黒字、横軸を時間としますとアルファベットの「J」の逆の形になりますから、「逆Jカーブ効果」と呼ばれているのです。
円安に振れ始めた頃、一部の学者の間では「逆Jカーブ効果によって、今年4月あたりから貿易黒字に転じるだろう」と言われていました。しかし、実際は反転していないのです。
それはなぜかと言いますと、輸出企業のかなりの部分が海外に進出してしまっているからです。今は、円安のよい影響より悪い影響が出やすくなっていると言えますね。この先、輸出が少しずつ増加すると思いますが、それでも貿易赤字が続くようだと、これはよい状態ではありません。
貿易収支は名目GDPを直接押し上げますから、貿易収支の動向にも注意が必要です。
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