「真面目に面白く!」東大寺は"小さな京大"? 東大寺学園 矢和多 忠一校長に聞く

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生徒は自由にやらせている

――現役時代の面倒見はいかがでしょうか

現役時代は学校にいるので、ささいな変化にも気づきやすい。だから基本的には生徒任せですね。生徒も自由気ままにやっています。あれやこれやと強制して生徒の芽を摘みたくないのです。枠を作って面倒を見るのではなく、広い視点で生徒を見て、それを先生たちは見守っているだけです。イメージとして、孫悟空は自由に飛び回っていたけど、実はお釈迦様の掌の上だった、というのに近いかもしれませんね。

――なるほど、仏教の話が出てきましたが、東大寺学園というだけあって、仏教的な教育はよく行われるのでしょうか。

それが特にはありません。かつては東大寺の境内に学校があって、いつでも仏教的な価値観がそばにありました。新校舎に移ってからは、以前ほど大仏が身近な存在ではなくなってしまったので、「東大寺学」という授業を行っています。それでも仏教的な色合いはあまりないと思います。いちばん初めの授業では「あいさつ」についてです。正しいあいさつの仕方を学ぼう、そういう授業です。

真ん中くらいにいれば京大には8割の確率で行ける

――学校としてユニークな取り組みはありますか?

うーん、なんでしょうね。当たり前の勉強をきっちりやっていく。教育の王道を行っていると思います。ただ、理科に関しては実験が多いでしょうね。中1の1学期だけで22回も実験をやっているのはうちくらいでしょうね。やりたいとリクエストがあれば、高3になってもやります。進路指導に向けて何か特殊なことはしていません。当たり前のカリキュラムで、長年やってきています。生徒たちもどれくらいから受験に向けて勉強を開始すればいいのか、先輩たちを見ているから知っているのです。だからうちにいれば、京大へ進むのは何とかなります。学校内で平均的な点数、校内偏差値が50くらいあれば、「京大はまぁ8割くらいの確率で行けるやろ」となるんです。

――なるほど、自由に見えてアカデミックなところは京大に似ていますね。

そうですね。「大道無門」という言葉があります。大きな道に、門はないという言葉ですね。どういう意味かというと、大きな道、すなわち自由に往来できる場所は開け放たれており、どこからでも出入りが自由だ。一方で、目標となる門がないから、進むべき方向は自分で決めなければならない、ということです。

ほかにも京大に似ているな、と思うのは、卒業式でしょうか。

東大寺の卒業式はすごい

――卒業式が似ているとってどういうことですか?

あんまり言いたくないですが、うちの卒業式はすごいと思いますよ(笑)(リンクは2010年の様子)。よく、「開成は運動会に力を入れて、灘は文化祭に力を入れる。東大寺は卒業式に力を入れる」ということを言われるくらいです。

生徒たちは仮装はするし、ようわからん寸劇というかコントみたいなことをしたり……。おまけに式の日程が2月14日のバレンタインという男子校とは無縁のイベントの日に行われるので、チョコをまきながら入場したり……。生徒側も「何か面白いことしたろ」という気風がありますね。

先生から「今年はふざけるなよ!」と注意をして生徒も、一応、元気よく「はい!」と返事はするのですが、やっぱり式が始まるとね……(苦笑)。

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