伝説の時計デザイナーが遺した最高の作品

拝啓、ジェラルド・ジェンタ様

時計デザインの巨匠ジェラルド・ジェンタ氏
ロイヤル オークやノーチラス、ブルガリ・ブルガリなど、傑作を生んだジェラルド・ジェンタ。ジェンタにたいする最後の公式インタビューをした広田雅将には、ある思いがある。

 

時計デザイナーのジェラルド・ジェンタには大変特別な思い入れがある。そもそも彼のデザインは好きだったし、加えて言うと、彼の生前最後のオフィシャルなインタビューにおけるインタビュアーは、だれあろう不肖・広田だったからだ。

巨匠ジェラルド・ジェンタの功績はさまざまなメディアで語られているので、細かくは言わない。ただふたつ加えるならば、彼は時計の世界に装着感という概念と、どんなシチュエーションでも使える「ユニバーサルウォッチ」という概念をもたらした。

ジェンタはこう語っていた。「シャツの袖に引っかかるような時計はよろしくない」「ロレックス オイスターのデザインは手がけたかった」。彼のそんな思いを象徴するのが、オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」と、パテック フィリップの「ノーチラス」だろう。ベゼルはスポーツウォッチよろしく太いのに、インデックスと針はドレスウォッチのように細い。彼は矛盾したデザイン要素を両立させ、しかもそこに薄いケースを与えた。彼を天才と言う人は多いが、生涯で数十万枚のデッサンを描いたジェンタは、真剣に時計デザインに取り組んだ、正真正銘の努力の人だったように思う。

最晩年で“暴走”したジェンタ

当記事は「GQ JAPAN」(コンデナスト・ジャパン)の提供記事です

そのインタビューで、彼は最新作であるジェラルド・チャールズをひっさげてきていた。さすがに本人には言えなかったが、そのデザインは奇怪で奇妙で、とてもジェンタが作ったものとは思えなかった。とりわけ「トゥルボ」というクロノグラフは、袖には引っかかるし、色合いも不思議だしと、巨匠晩年の作とはとても思えなかった。ジェンタはダメになった、過去のセンスはもう失われた──そういう意見を時計関係者からよく聞いたし、筆者も同感だった。

しかし、最近ふと思う。ジェラルド・ジェンタは、あえて奇抜なデザインに取り組んだのではなかったかと。

次ページ創作者としての心ゆえ
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • 今見るべきネット配信番組
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 森口将之の自動車デザイン考
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ついに上場廃止、大塚家具の末路
ついに上場廃止、大塚家具の末路
日本初、「工場を持たない」EVメーカー誕生の衝撃
日本初、「工場を持たない」EVメーカー誕生の衝撃
日本人に多い「腸を汚すフルーツの食べ方」4大NG
日本人に多い「腸を汚すフルーツの食べ方」4大NG
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
男性も入れる?新業態『ワークマン女子』の中身
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
2050年の中国<br>世界の覇者か、落日の老大国か

米国と並ぶ超大国を目指す中国。しかし中国の少子高齢化はこれまでの想定を超える速さで進行しています。日本は激変する超大国とどう付き合うべきか。エマニュエル・トッド、ジャック・アタリ、大前研一ら世界の賢人10人が中国の将来を大胆予測。

東洋経済education×ICT