しかし、お見合いは出会いのきっかけにすぎない。対峙した相手の気持ちを手に入れなくては交際に発展しない。交際にならなければ結婚できない。「お見合い」にも、人間力やコミュ力が必要なのだ。
「女性への苦手意識をなんとか克服したい」――。3年いた結婚相談所を退会した洋次は、ずっとこう考えていた。そしてある夜、ネットで面白いサイトを見つけた。“どんなブ男でも数カ月で美女を口説けるようになる”という『モテ塾』のランディングページだ。
「その塾の主宰者の写真が出ていたんですけど、顔がまったくイケてなかったんですよ。その男性が、自分が狙いたいと思った女性とはほぼ100%近い確率でエッチしたとかって。その塾に即決で申し込みました」
世の中に「婚活塾」「モテ塾」というのがあるのをご存じだろうか。女性版のこうした類の人気塾は、恋愛経験豊富な女性やかつて店のナンバーワンを誇った元ホステスやキャバ嬢など、美人の主宰者が多い。ところが男性版に至っては、主宰者が大抵、言ってしまえばブ男だ。彼らは、「昔はまったく女性にモテなかった。そのモテない僕がいまやモテモテ。女性を落としたい放題。そのモテ技術を教えます」というのをウリにしているところが多い。
「費用は、30万円くらいでしたね。6カ月コースで、月に1回のグループ講義があって、1講義ずつテーマが違っていました。 “デートをシミュレーションして、デートコースを組み立てる”“両親に感謝の言葉を綴った作文を提出する”とかいう宿題も出ました。
モテ塾では「もう経験済み」という顔をしなくて済んだ
モテ塾に通う男性を笑う人がいる。しかし、私は、「塾に通ってでも、なんとか自分を変えたい」「モテるようになりたい」「かわいい女性とおつきあいがしたい」「エッチがしたい」と、前向きな努力をしている彼らを笑うことはできない。むしろ、すばらしいと拍手を送りたい。
異性とつきあうこと、異性と性的経験をもつことは、年齢が上がれば上がるほど、ハードルが高くなっていき、「経験がない」と、カミングアウトもしづらくなる。そして近年、性的経験がない未婚者の割合が増えているというデータもある(国立社会保障・人口問題研究所調べ)。
洋次は、軽く笑いながら言った。「塾の受講生の中には、僕のように“女性と1度もつきあったことがない”という人が何人かいました。月1のグループ講義で顔を合わせる人たちは、30代後半、40代が多かったんですが、女性経験は2人とか3人の人がほとんど。それも皆さんが、20代後半とか30代に入ってからの遅咲きのデビューでした(笑)。僕は高校や大学時代の友達と会った時って、“もう経験済み”って顔をしていたんですけど、塾生の人たちとは本音で話せたし、それもよかったなって思っています」。
「モテ塾」を卒業して、洋次は、お見合いに再びチャレンジしてみることを決心した。「学んだことを実践で生かしてみようと思います」。
そう簡単にはいかないかもしれないけれど、以前の彼とは違っているはずだ。婚活にとって大事なこと、それは諦めないことだ。結婚するのが難しいと言われている30代後半、40代、50代の中で、結婚できた人たちとは、どんな人たちなのか。それは、とことん“結婚すること”に執着をし、結婚できるまで異性に出会い続けた人たちなのだ。
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