「利益率の悪い投資」!? うまいことを言う。確かにそのとおりだ。だからこそ、振られ続けていくと、心も体もサイフもすり減っていくのだ。
「どうして、お見合いをしても、断られちゃうんだろうね」
「まあ、女って見た目で男を選ぶじゃないですか。僕みたいなのは、しかたないですよ」
とはいえ、お断りをされる理由は、“見た目のイケてなさ”だけではないと洋次はわかっていた。世の中には、ブ男でも女性にモテる人種がいる。お笑い芸人がその代表格だろう。彼らは、女性を楽しく笑わせ、心をつかむ話術をもっている。コミュニケーション能力に長けているのだ。洋次がもっとも苦手なのが、女性とコミュニケーションを取ることだった。
「つきあったことはないです、1度も」
「女性を目の前にすると、なんか緊張しちゃっていつもの自分が出せないんですよね。挙動不審になっちゃうというか。それにはちょっとしたトラウマがあって」
「どんなトラウマか聞いてもいい?」
「中学の時、僕がクラスの中でもかわいいと言われていた子と話をしていたら、クラスの中でメチャクチャ、イケてたヤツに、“お前、なんで女と話してんだよ。そういう身分じゃないだろ”って、からかわれたんですよ。耳がカーッて熱くなって、それからクラスの女子とは、誰とも話ができなくなった」
思春期の洋次の心にグサリと突き刺さった言葉だった。高校は、男子校に進学した。女性がいなかったので学校生活は快適だったが、3年間男だけの学生生活は女性への苦手意識をさらに増幅させた。大学には女性もいたが、かかわることをなるべく避け、男とばかりツルんでいた。
「合コンとか、行かなかったの?」
「行かなかったですね。あ、1回か2回は行ったかな。人数合わせで」
「彼女はできなかった?」
「できなかったですね」
「じゃあ、女性とおつきあいしたのは社会に出てから?」
「ないですよ」
「えっ?」
「つきあったことはないです、1度も」
それでいきなり「お見合い」という土俵に上がっても、結婚するのは難しいだろう。しかし、洋次のような男性は、お見合い市場では珍しくない。女性と1度もつきあったことがないのだから、ナンパや合コンで女性を獲得するのは難しい。また、その勇気もない。ならば“1対1のお見合いならどうにかなるかもしれない”と結婚相談所の門をたたくのだ。
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