慰安婦問題は韓国の理性なき民族主義を煽る

台湾人から見た近隣国の大きな「誤り」は何か

当時、強烈な反日民族主義の社会的な雰囲気の中、私は公平客観的な第三者として、日韓の怨恨を分析することは無理だと感じた。そこで研究継続を断念し、大学院を中退して台湾に帰ることを選んだ。その後、2003年に台湾の出版社から『韓国史』を執筆・出版。これでようやく歴史学から逃げ出したという無念を晴らすことになったのだが……。

この『韓国史』は、台湾における韓流ブームのおかげで売れ続け、現在まで4刷と刷りを重ねた。本書の第2刷を出した際、台湾でも教鞭を執ったことのある大阪大学名誉教授の濱島敦俊氏が、本書で取り上げた日本による朝鮮での土地調査事業の部分で、韓国の観点からすると間違った論述があるとの指摘を受けた。それを受け、経済史が専門でソウル大学の李栄薫教授が書いた、『大韓民国の物語―解放前後史の再認識』という本を引っ張り出したのである。

そこでようやく、1955年に韓国の学者で東京大学にいた李在茂氏が論文上で、「日本が朝鮮で朝鮮総督府の調査事業を利用して全国の農地の40%を強制的に占拠した」と、捏造していたことを突き止めた。ソウル大の李教授はこれに「歴史学者が作り出した物語だが、その後、繰り返し引用されたことで常識として定着してしまった」と批判している。

いわゆる旧日本軍従軍慰安婦の実情を研究した、韓国・世宗大学の朴裕河教授の著書『帝国の慰安婦』を読んでも、韓国の歴史においてこれと同じような脈絡を発見する。「挺身隊=慰安婦=少女」。過去、偏った論述が繰り返し引用されることで、逆に常識として定着してしまう。韓国人は戦後、民族の自尊心を修復するために歴史を改ざんしてきたのだが、かえって日本が歴史を改ざんしたと批判している。台湾のことわざで、「亀がスッポンをしっぽがないと笑い、スッポンは亀を首が短いと笑う」ということわざがあるが、日本でいえば「五十歩百歩」だろう。

韓国人が賠償を請求すべき対象は誰か

振り返ると慰安婦問題は、終戦から50年後の1990年代半ばになって韓国で大きく取り扱われるようになり、日韓外交の足かせとなってきた。その1つの重要なカギとなるのは、1965年に朴正熙政権が日本との間で「日韓基本条約」を調印し国交を正常化した際、すでに民間個人の請求権を包括的に解決していたことを、韓国側が無視したことにある。

韓国人によるこの種の不合理な要求、さらに外交協定の法律的効果を認めないやり方は、台湾人という第三者の立場から見た場合、韓国人は考えや行動が変わりやすい性格だと感じるし、国際的にも「韓国人は信用できない」と一部で見られがちな原因となっている。

筆者自身の意見ではあるが、慰安婦の賠償請求で、韓国人は明らかに請求対象を間違えている。彼らは、朴槿惠政権(大統領自身は職務停止中)が彼女の父親である朴正熙元大統領の犯した誤りを清算し、韓国政府が自ら、被害者の慰安婦に国家賠償をするよう求めるべきだ。しかし、韓国の一部の団体はそれをせず、日本に恥をかかせようと国内外に大きな声をあげている。これはやりすぎといえる。

ここ数年、私は台湾各地で「韓国を知ろう」と題する巡回講演を行っているが、しばしば聴衆から、韓国人は信用がないことに関する質問を受ける。私はこれに対して、いつも1つの例を挙げて説明している。世界各国の銀行はいずれも台湾に支店を開設しているが、韓国の銀行だけはほぼ開設していない。なぜか。「信用」は銀行の最も重要な命であり、信用のない銀行にカネを預ける人などいないからだ。

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