この点を確かめるために価格判断を見ると、次のとおりだ。
業種や規模によらず、仕入れ価格については「上昇」が「下落」を上回り、販売価格については逆になっている。つまり、円安によって原材料価格が高騰したが、それを販売価格に転嫁できないのだ。
ただし、詳しく見ると、「上昇」-「下落」は、仕入れ価格で中小企業の数字が大企業を上回る。また、販売価格の差の絶対値は、大企業ほど小さい。製造業、素材産業の大企業は、販売価格について「上昇」が上回っている。
つまり、円安による原材料価格の高騰を、大企業は中小企業に対してある程度転嫁できるが、中小企業は販売価格に転嫁できないのだ。
雇用の面を見ると、円安で利益が増えた大企業製造業も、雇用を増やす姿勢を見せていない。12年3月と13年6月を比較すると、雇用人員判断(「過剰」-「不足」)は11から8に低下している。つまり、過剰感が減少しているものの、依然として過剰判断だ。新卒採用計画(前年比)は、12年度の6.5%から13年度2.6%に低下している。
中小企業は原材料価格の上昇を価格に転嫁できにくいので、企業収益が大きく改善せず、これが賃金、雇用減につながるだろう。中小企業・小規模事業者は国内企業全体の99.7%を占め、雇用者数は7割に達するので、影響は大きい。これは、法人企業統計に見られる状況と同じだ。中小企業が多い地域では、景況感は改善しないだろう。
これから大企業と中小企業の「二極化」が拡大する可能性がある。
政府は、飼料や漁船用燃料の価格高騰に補助策を講じることとした。これは、円安が問題だと認めたことを意味する。今後、原料価格高騰対策の政治的要求が強まるだろう。
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