日本銀行が4月に「異次元金融緩和」を開始してから、4カ月近く経った。ここでその効果を検証しておくことは有意義だろう。
金融緩和の目的は、マネーストックを増加させることである。では、マネーストックは増加したか?
6月のマネーストックの対前年増加率は、M2で見ると3.76%、M3で見ると3.01%となった。これは、「マネーストックの伸び率が高まった」と報道された。
確かに、これらの伸び率は、2009年以降で最高のものだ。しかし、09年9月、11年11月頃にも、マネーストックの伸び率は今回とあまり変わらぬ伸びを示した。それにもかかわらず、経済には格別の変化は生じなかったのである。
また、季節調節済み前月比(年率)で見ると、6月はM2で6.1%増であるが、これは12年12月と同じ数字だ。M3では4.6%増だが、これは12年12月の4.4%増に比べて高いものではない。また、4、5月の数字は、M2で見てもM3で見ても、12年12月や13年2、3月の数字より低い。つまり、マネーストックが顕著に増えているとは言い難い。
重要なのは、こうした伸び率の観察よりは、マネタリーベース増加との関係である。
図に示すように、マネタリーベースの増加額は、4月以降急増した。これは、異次元金融緩和が導入され、日銀が民間の銀行から巨額の国債購入を始めたことの直接の結果である(日銀が国債を購入した代金は、金融機関が日銀に保有する当座預金に振り込まれる。当座預金はマネタリーベースの一種なので、マネタリーベースが増える)。
問題は、マネーストックの増加額が、どの定義の指標で見ても、その月のマネタリーベースの増加額より、2兆~4兆円程度少ないことである。5月は、マネタリーベースが増加したにもかかわらず、マネーストックはほとんど変化しなかった。
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