三井住友銀行 バークレイズに“少額出資”の背景

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三井住友銀行 バークレイズに“少額出資”の背景

三井住友銀行は、英大手銀行バークレイズ(BARC)が実施する45億ポンド(約9600億円)の普通株増資で、5億ポンド(約1065億円)の引き受けを決めた。1株2.96ポンド。出資比率は2%程度になる見通しだ。

増資ではほかに、カタール投資庁とカタール王室の投資機関が計4900億円、中国国家開発銀行が290億円、シンガポール政府系ファンドのテマセク・ホールディングスが426億円をそれぞれ引き受ける。

BARCは総資産約261兆円と、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の約2・5倍の規模に上る。昨年の税引き前利益は約1・5兆円と9倍。昨年来の信用市場の混乱に伴う損失は3500億円で、欧米金融機関の中では少なく、税引き前利益は一昨年度並みを守った。

しかし、今年に入って状況が深刻化。第1四半期において、評価益を除いても2100億円の与信費用が発生したと発表。このため4.5ポンドを超えていた株価は3ポンドまで急落していた。

BARC側は増資の目的について、国際基準上の中核的自己資本(TierI)の比率で7・25%を上回り、さらに成長機会を得るための原資を確保すること、とする。

「2%」の影響力は?

一方、三井住友は今回の提携について、「グローバル戦略上、親しかったバークレイズと業務提携へ向けて今年1月から話し合いを進めていた。5月になって増資の話が出て、投資のタイミングとしてもよいとの判断になった」と説明。「業務提携」ありきで、「出資」が主目的ではないことを強調する。

「旧宗主国の名門銀行としてインド、パキスタンなど、われわれが手を出せないような地域にネットワークがあり、富裕層向けなど優れた運用商品の提供を受けることも考えられる」との期待を三井住友側は持っている。出資リスクについては、個人・法人向け融資で稼ぐ商業銀行のため、投資銀行に比べて、損失リスクや収益基盤の毀損が少ないとの判断もあるようだ。

ただ、直近で収益の3分の1を占める投資銀行部門は、サブプライム問題が火を噴く以前、証券化商品が稼ぎ頭だった。3月末時点の資産内容を見ると、証券化商品の「ABS CDO」で8500億円、米サブプライム関連投融資で9000億円、住宅ローンの一種「Alt‐A」で9500億円、モノライン(金融保証会社)向けで6000億円など、“問題案件”が多い。これらの追加損失を見込んだうえでの増資とみられるが、信用市場が機能不全の状況下では予断を許さない。

2%程度の出資で、どこまで業務提携の成果が上がるのかという疑問もある。今年1月のみずほコーポレート銀行による米メリルリンチの優先株引き受けも12億ドル止まり。実は、今年3月末時点のTierI比率を見ると、みずほフィナンシャルグループは7・4%、SMFGは6・9%。つまり、サブプライムによる傷が浅かったとはいえ、欧米大手に比べて資本余力はそれほどない。3メガグループとも8%を目指して、利益の積み上げを図っていたが、ペースは緩い。最も余裕があるのは、TierI比率7・6%の三菱UFJフィナンシャル・グループで、現在その動向が注目されている。

邦銀にとって「攻めの姿勢に転換できるチャンス」(渡辺喜美金融相)であることは確か。ただ、欧米銀から出資の話が相次いでいるものの、大掛かりな投資の余力が3メガにないのも事実。また、ビジネスモデルが崩壊し、欧米投資銀行からは人材の流出が続いている。長く我慢を重ねてきた3メガグループだが、反転攻勢への投資判断はそれほど易しくはない。

(大崎明子 =週刊東洋経済)

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