賃料3.5倍増!宇都宮「もみじ通り」の奇跡

1人の不動産屋が衰退地域をよみがえらせた

すぐその店に出向き、移転の話を切り出すと、幸いなことに店主は塩田氏が2007年から運営しているMET不動産を知っており、翌週もみじ通りを見に来てくれた。MET不動産は古くても味のある物件や、デザイン性の高い物件などを紹介しており、店主はそのことを知っていたのだ。

「『人通りは少なく、今は自分のオフィスしかありません。でも、近くに店を出しませんか? 自分にできることはします』と口説きました。ひどい話です。でも、1人雇うか、雇わないかの規模のカフェはよほど山奥でなく、周辺の人にある程度利用してもらえれば成り立つもの。それよりも商売をやる人は店のある場所で1日の大半を過ごすことになりますから、居心地が気になります。幸い、もみじ通りの静かで何もない状態を気に入ってくれたのだろうと思います」と、塩田氏は話す。

ところが、問題があった。もみじ通りには空いている物件はあっても、所有者が貸すつもりがない物件ばかりだったのだ。目を付けた物件所有者に声をかけても、立て続けに2軒断られ、3軒目も連絡先不明。郵便受けに手紙を入れるなど、古典的なやり方を続けること2カ月後、所有者から了承を得て、2011年に待望のカフェがオープンした。

7年間でなんと17軒が出店

同時期には、塩田氏のオフィスから15秒ほどの場所に氏の知り合いが雑貨店を出店したほか、別の場所にはドーナツ屋も進出。さらにその隣に総菜店ができたことで、地元のメディアが注目し始めた。店舗の多い場所ではたまたま数店が同じ地域に開業したところでニュースにはなりにくい。が、宇都宮市で、しかもほとんど何もなくなった通りの狭いエリアで、出店が続くとなると話は違う。

「あ、もみじずき」と名付けられたイベント時のもみじ通り。普段は目立って人通りが増えたというわけでもなく、滞在時間が増えているのだという(塩田氏提供)

塩田氏からすると、自分の理想を実現させただけだが、メディアに紹介されたことで、もみじ通りの人気に火が付いた。オフィス移転から7年後の現在では、17軒が出店し、2013年からはもみじ通りとつながりがある「あずき坂」も含めたエリアでのイベントも始まった。これに伴い、賃料も少しずつアップしており、現在は物件にもよるが坪7000円ほどまで上がった。地域の価値は確実に上がってきているのだ。

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