賃料3.5倍増!宇都宮「もみじ通り」の奇跡

1人の不動産屋が衰退地域をよみがえらせた

都心部以外では下落傾向にある賃料を上昇させたわけだが、それを可能にしているのは、実は出店をコントロールしていることにある。塩田氏は笑いながら言う。「ウチは物件を見せない不動産会社なんです」。

不動産の単価を上げるためには、物件単体以上にエリアの価値を上げることが大事だが、そのためには出店をセーブすることも必要。すぐ退去するような店を入れるより、地域のブランド力を上げてくれるような店に絞ったほうがいいわけで、相手によっては物件の下見にすら行かせないこともあるという。

「もともと、まちづくりをしようという発想ではなく、自分が好きに楽しく暮らせる場所をつくりたいのが基本。1つずつの店が面白ければ、地域も面白くなるはずですから、自分が良いと思う店に来てもらいたいと思っています」(塩田氏)

所有者が塩田氏を信頼するワケ

市場に出ている物件が少ないことも奏功している。物件所有者を直接口説ける、塩田氏のような人がいなければ借りにくいのである。多少賃料が上がったとはいえ、もみじ通りの物件の大半は10坪、15坪。不動産会社としてそれほど利益が上がるわけではないのに、所有者との交渉を考えると手間がかかる。そのため、他社が参入する可能性は低い。

写真左手は体験レッスンもできるギターショップ「スズメレコード」、右側の白い店舗が遠方からの客も多い「ドー・ドーナツ」、隣に総菜の「ソザイソウザイ」、向かいには美容室「ethica」、花とリボンの店「アトリエドゥフェ」がある(筆者撮影)

加えて、塩田氏は空き家所有者が貸しても良いと思えるような仕組みを作っている。空き家所有者は大抵の場合、金銭的に困っておらず、手間や費用をかけてまで貸すつもりはない。だとしたら、費用負担なく貸せて、相続などで売却する際にはもめずに返還してもらえる仕組みが望ましい。具体的には改修費は入居者負担、10年の定期借家契約となっており、問題があれば塩田氏にいつでも相談できる。

都心での賃貸契約には、貸す人と借りる人との信頼関係はあまり必要とされないが、地方ではそこがポイントになる。塩田氏は所有者を口説く際には入居希望者を同行し、「この人に貸してください」と頼むという。

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