児童相談所の現場では何が起きているのか

支援の前に知るべき当事者たちの現実

また保護所にいるあいだは外出は禁じられる。学校にも行けない。食事中の私語も禁止。外部との連絡は親への手紙など限られていて、友達と電話で長話など許されない。そして、いつ、どんな処遇が決定されるのか、自分自身の身の振りかたがどうなるのかも、まるで知らされることなく、数週間後か、1年後か、またも突然行き先を告げられる。家庭に戻る子どももいるが、行ったこともない土地の施設に送られることもある。

本当に子どもたちを守ることにつながるのか

『ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

思い浮かぶのは「刑務所」。傷ついた子どもが初めに入る所がここなのか。正直、衝撃を受けた。もちろんこうした運営には理由はある。保護所では虐待だけでなく、非行や発達障害などにより育てにくさを理由に親が育児放棄した子どもなど、さまざまな事情をかかえた子どもたちが同じ場所で集団生活をしなくてはならない。

ほんの小さな出来事が大きなトラブルを引き起こしたり、ときには性的な事件に発展したりすることもなくはない。行政が家庭に介入して子どもの身柄を引き受けたのに、万が一の事故でもあったら大変なことになるというのもわからなくはない。紙の管理や連絡の制限などは子どもの個人情報を守る必要からやむをえないとされているようである。職員の数も多くの場合慢性的に少ないようだ。

が、だからといってこれでいいのか。本当に改善の余地はないのか。これが本当に子どもたちを守ることにつながるのか。よりよい処遇を行えないのだとしたら、原因はなんなのか。結果、ここでの抑圧された生活の経験が、子どもたちにさらなる心の傷を増やしているとしたら……。

子どもたち、親、職員ら100人以上にインタビューした著者は、一時保護所の現状と課題を浮き彫りにしつつ、だれかを「たたく」ことではなく、構造的な問題点を明らかにしようと試みている。かつて一時保護所で過ごした子どもたちの声には、胸が痛む。精一杯頑張っている職員の言い分にも理解できるところもある。一方で、子どもたちと職員との認識のギャップも浮かび上がる。

振り返ってみれば、ともに大過なく過ごす親子でも、本当に子どもの心をわかっているかといえば、そうとも言い切れないというのに、さまざまな状況の中で苦しみ、感情の糸がもつれてしまった子どもたちに、通り一遍の処遇で心の癒やしなどあるはずもないのである。子どもたちに自我と尊厳があればこそ、ことは簡単ではない。

本書にはこうした児童虐待問題の根底にある貧困対策の不足や、児童福祉に対する予算の手薄について述べつつ、いかに公平公正な処遇を子どもたちに保障するかという行政への改善策とともに、民間人としてできることもあるのではないかという著者の提言も述べられている。

まずは知ること。当事者の声を知るための第一歩としても読むべき一冊だと思う。

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