秀逸?“ランナー”猫ひろしのビジネス感覚 2つ以上の特技を生かして「稼ぐ」方法

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市民ランナーの多くは自分の喜びや達成感のために走っているが、猫の場合は「ビジネス」のために走っているという側面が大きい。実は、猫以外にも「マラソン芸人」として稼いでいる者がいる。たとえば、「げんき~ず」というコンビの宇野けんたろうだ。宇野はフルマラソンで2時間37分05秒、ハーフマラソンで1時間14分21秒という自己ベストを持つ。ハーフの記録は芸能人がマークしたタイムでは最速だ。

宇野は学生時代に競技歴のない猫と違って、高校では陸上部に所属。3年生のときには全国高校駅伝にも出場している。チームは59チーム中57位で、宇野は6区で区間54位という微妙な成績だ。当時の5000mの自己ベストは15分36秒。一般のランナーから見れば「エリート」に感じるかもしれないが、陸上の世界では「まあまあ強い」というレベルだ。ちなみにこれぐらいの選手だと箱根駅伝常連校にスポーツ推薦で入学するのは難しい。それでも、RUNが芸を助けている。

猫や宇野などの「マラソン芸人」以外にも、かつての長谷川理恵や、近年の安田美沙子も「走る」ことで多くの仕事(ギャラ)を獲得している。彼女たちもアマチュアの皮をかぶったプロランナーというべきかもしれない。

2つ以上の特技が、特異なキャラをつくる

失礼ながら、猫はランナーとしても、芸人としても一流とはいえない。しかし、彼ら芸人ランナーの活躍にはビシネスのヒントがある。トップクラスの実力がなくても、2つ以上の特技を組み合わせることで、それをオンリーワンの”武器”にすることができるからだ。

芸能界でいえば、料理研究家×美人、モデル×おバカ、ヘアメーク×おネエ、芸人×占いなどもそうだろう。本職にもうひとつの「肩書」がつくことで、一気にブレイクを果たす者がいる。

自分の強みは何なのか。その分野でトップになれなくてもあきらめるのはまだ早い。2番目に得意なことと融合させることで、新しい”何か”が生まれる可能性を秘めているからだ。

正直に言うと、真剣に競技をしてきた著者は、猫のような中途半端なランナーの稼ぎ方を見ると、少々ウンザリする。ただ、猫を2回ほど取材したことがあるが、インタビューにはマジメに応えて、写真撮影では嫌な顔をまったく見せずに、レンズに向かってギャグを連発してくれた。そこに芸人・猫ひろしのプロフェッショナルを感じることができた。

猫はどんな「夢」を抱いて芸人になったのか。そして、どこに向かって走っていくのか。いや、他人の心配をするのはよそう。そんな暇があるなら、自分の特技を磨くことのほうが絶対に有意義だから。(=敬称略=)
 

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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