グローバル化の恩恵を農村に分配しなければ!−−インフォシス テクノロジーズ創業者 ナラヤナ・ムルティ

サブプライム・ショックを機に世界経済の不確実性が増す中、依然として8%近い経済成長が予想されているインド。成長を牽引するIT産業において、業界2位につけるのがインフォシス テクノロジーズだ。米国企業のソフトウエア開発を受託する国際分業のビジネスモデルで急成長し、インフォシスだけでインド総輸出額の約1割を担うまでになった。

創業者のナラヤナ・ムルティ氏は名門インド工科大学(IIT)を卒業後、わずか250ドルを元手に6人のエンジニア仲間と会社を興した。創業メンバーは皆、中産階級の出身。財閥企業が産業の中枢を担っているインドで、ムルティ氏は庶民の尊敬を集める立志伝中の人物である。一般社員へのストックオプションや女性の積極登用など先進的な仕組みを導入し、現地の雇用慣習にも風穴をあけた。

創業メンバーに経営のバトンを譲ってからは、チーフメンター兼会長としてインフォシスの精神的支柱であり続けている。

「頭は資本主義者、心は社会主義者」と自らを語り、公共意識の高い発言で知られるムルティ氏は、経営の第一線を退いた今も国内政財界のオピニオンリーダーだ。「21世紀のガンジー」と呼ばれる賢人は、不均衡を抱えた自国の成長を、そして混迷する世界経済をどうとらえているのか。

--わずかな資金を元手に会社を立ち上げ成功しましたが、起業当時のインドは財閥企業が産業の主役でした。あの時代に、なぜインフォシスを創業したのでしょうか。

インドでも技術者というプロフェッショナルな人材が尊重され、権威を持てる企業を作りたいと考えたのです。インド企業が世界の大企業と渡り合えると証明してみせたかったのもあります。

--今ではIT産業のみならず、インド経済を代表する企業になりました。

ええ、われわれは非常にアイコニック(象徴的)な企業といえます。一つには、1991年の規制緩和で成長を始めたからです。それまではビジネスのためにコンピュータを輸入することや、データ通信のための回線を確保すること、外貨を獲得すること、すべてが非常に難しい状況でした。

--ライセンス・ラジ(許認可王国)と呼ばれていた時代でした。

 規制緩和後、92年から現在まででインフォシスの売り上げは実に2700倍に膨らみました。それまでの成長の10倍のスピードです。成長のもう一つの理由は、世界のIT企業で初めてソフトウエア開発の工程を分割して、インドのようなコスト競争力のある地域で開発するビジネスを始めたことです。

しかも顧客企業が集中する米国とはざっと半日の時差があって、米国が眠っている間にインドで開発が進められる。24時間ノンストップで開発を進めることを可能にしました。

--国境を越えて生産分業する、グローバル化の典型的な例ですね。

ええ。その意味ではインフォシスはグローバリゼーションの申し子です。

--つまりグローバリゼーションを支持するわけですね。

もちろんです。グローバリゼーションは最適な地域から人材を集め、最もコスト競争力のある場所で生産し、市場のある地域で製品を販売する。そして、これらのために最適な形で世界中から資本を集めるという概念です。かつては国境に制限されていた私たちの経済活動が解き放たれたわけです。グローバル化が進めば進むほど、インフォシスのような企業は驚異的なスピードで成長していくでしょう。これは間違いのない事実です。 

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