苦悩する人気レストラングループ 業態開発・ブランド再構築を模索
「ラ・ボエム」や「モンスーンカフェ」など、人気業態をいくつも抱え、六本木や青山など東京の一等地を中心に、カジュアルレストラン事業を手掛けてきたグローバルダイニング。だが、全国に約60店舗を展開するまでに規模を拡大した今、業績は踊り場を迎えている。
2002年、当時の小泉首相と来日中のブッシュ米大統領が会食に訪れ、大きな話題を呼んだ東京・西麻布交差点の和食業態「権八」。好立地も手伝って、来店客の約半数を占める外国人を中心に、今でもにぎわいを見せている。
だが、05年に福岡・天神に出店した権八は苦戦。米国進出の3店目として、07年ビバリーヒルズに出店した権八も、売り上げが伸び悩む。天神店は、外国人客が見込めない分を日本人でカバーできず、ビバリーヒルズでは、日本になじみのない外国人のニーズと合わなかったのが大きな敗因だ。
04年には、沖縄の大型商業施設内に、フードコート型の新業態「フードコロシアム」をオープン。こちらは、開業から3年が経過した後も順調だが、06年に東京・南町田駅前に出店した同業態は、赤字が続く。
地方出店や新業態開発に、次々と挑戦するが、その多くがなかなか軌道に乗らず、業績の足を引く。現在のグローバルダイニングはこうした状況に苦しんでいるのだ。今年度は、新規出店を抑制し、既存店の立て直しに注力するというが、踊り場はまだしばらく続きそうだ。
ブランド再建に本腰 旗艦店改装したキハチ
「キハチ」ブランドで、レストランやカフェを展開するキハチアンドエスも、業績は停滞している。特に、旗艦店としてブランドを象徴する存在である銀座本店の客足が伸び悩んでいる。「02年ごろから銀座周辺で高級レストランの出店が相次ぎ、その多くは厳しい競争に耐えきれず短期間で撤退していったが、話題性のある新しいレストランに顧客を奪われることも多かった」(柴野智政・マーケティング統括室長)。
キハチはこれまで、ブランドとして敷居を高くするのではなく、逆に、顧客が求めることに歩み寄ってきた歴史がある。「ケーキを持ち帰りたい」というレストラン客の要望から、ケーキ専門のショップを開始。その後も、カフェや揚げパン専門店、百貨店やモール中心にソフトクリーム店を出店するなど、多くの業態を展開してきた。
一昨年からは大手食品メーカーと手を組み、熊谷喜八シェフ監修のチルド総菜など、監修ビジネスにも乗り出した。現在もコンビニなどで、キハチの名を冠したカレーや冷製スープが販売されている。
だが一方で、こうした多角化はブランドイメージの拡散を招いたのも事実。実際、レストランの常連客から、「なぜコンビニでも商品を売っているのか」と、意見が寄せられたこともあったという。
07年9月、キハチは銀座本店の全面改装を実施した。1万円を超えるフルコースを中心に、キハチ独自の「無国籍料理」を、あらためて知ってもらう狙いもある。改装前より単価も引き上げた。だがその代わり、1階部分はオープンカフェにして、20~30代女性を中心に気軽な利用を促す。新規の客に、存在を知ってもらうためだ。
リニューアルオープンから9カ月。目に見える成果はまだ出ていない。ブランドの再建には、もうしばらくの時間が必要なようだ。
(週刊東洋経済編集部)
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