世帯別に見ても、いまや「単身世帯」が最も多く、かつて標準世帯と呼ばれた「夫婦と子」からなる世帯は、2010年時点ですでに「単身世帯」に抜かれています。2035年には「単身世帯」が4割弱を占め、「夫婦と子世帯」は23%程度にまで縮小すると推計されています。
その一方で、「夫婦のみ世帯」もなだらかに増加しています。これは、ひとつに子を持たない選択をする夫婦の増加があります。もうひとつは、子が独立した後、高齢夫婦だけで暮らす世帯の増加の影響があります。そして、その高齢夫婦世帯がやがて高齢単身世帯へとつながっていくわけです。
20年後には一人暮らし世帯が全体の4割に?
つまり、日本の20年後とは、独身者が人口の半分を占め、一人暮らしが4割となる社会なのです。そう考えると、同じ屋根の下に、親子が「群」となって暮らす家族の姿は、もはや風前の灯となりつつあると言っても過言ではありません。こうした個人化の流れは、日本だけの話ではなく、先進諸国に共通して見られる傾向です。個人化に伴う「家族」など従来の共同体の崩壊については、多くの社会学者が論説を展開しています。
ドイツの社会学者ウルリッヒ・ベックは、「昔、家族は、資本主義社会での心のよりどころだった。だが、個人化によって家族はリスクの場に変わりつつある」と分析しました。ベックによれば、従来の伝統的集合体の概念である家族とは、「ゾンビカテゴリー(死に体カテゴリー)の好例である」と表現し、人間にとって家族とはもはや必然的共同体ではなく、その親密性は選択的であるとまで言っています。
ベックと並び称される社会学者ジグムント・バウマンも同様に、個人化について言及しています。バウマンは、かつて個人は、地域や会社や家族といった中間的共同体の中でまとまっていたソリッド(固体)社会にあったが、現代は、個人が流動的に動き回るリキッド(液状)社会となったと表現しました。安心・安全・安定のそれら固体的共同体が失われたことで、人々は自由に動き回れる反面、つねに選択や判断をし続けなければいけない自己責任を負うことになるのです。
ベックもバウマンも、この個人化の流れは宿命的・運命的なものであり、逃れられないとまで言い切っています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら