「家族」だけではなく「職場」というコミュニティでも同様の変化が起こっています。かつては一生同じ会社にとどまるという働き方が普通でしたが、いまや自由に転職し、キャリアアップするという考え方が出てきています。副業を認める流れもあります。働く場所をオフィスに限らないノマド的な働き方もそのひとつです。こうした動きによって、労働者が個人としての活躍の場と自由度を拡大したといえるでしょう。
消費の世界においても、個人化は顕著です。大衆という「群」がモノを所有することに価値を見いだした時代はとうに過ぎ去り、人々は個人としての体験に価値を見いだし、それを仲のよい友人やSNSのグループなどの「身近で小さなコミュニティの中」で共有し、価値を再確認するようになりました。ソロ社会化によって、今後も消費動向は劇的に変化すると予想されます。
この個人化の流れから発生するソロ社会化についても真剣に考えるべきなのです。結婚があらゆる人たちの人生の必然だった時代は社会的に終わりつつあります。結婚して、子を産み育て、家族となって暮らす、誰しもがそんな統一レールの上に乗るとは限りません。一度結婚をしても、離別や死別などによって、いつでもソロに戻るリスクがあります。すなわち、結婚したらすべてがハッピーエンドになるわけではないのです。
昭和的価値観の既婚男性は「ソロ社会」を生き抜けるか
実は、そうしたソロ社会において、最も危機意識のないのは「昭和的な価値観」を引きずる既婚男性の方です。特に、リタイヤ後の高齢既婚男性の配偶者に対する依存度は深刻です。
自殺を例に挙げてみましょう。もともと自殺率は圧倒的に男性のほうが多いのですが、これを配偶関係別で見ると、最も高いのは離別者です。続いて死別者。要するに、配偶関係にあった男性が、妻と離別か死別した場合の自殺率がいちばん高いということになります。
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