2035年「人口の5割が独身」時代がやってくる 親や配偶者に「依存しすぎ」ていませんか?

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既婚男性の皆さん、想像してみてください。もし、自分より先に妻に先立たれてしまったら? もし、長年連れ添った妻のほうからいきなり離婚を突き付けられてしまったとしたら? あなたはその先、一人で生きていける自信がありますか? 突然一人になったとしたら、はたして生きていけますか?

第一生命経済研究所の有配偶高齢者60~79歳の男女を対象とした調査レポート(2015年)でも、病気や寝たきりになったときに夫の6割が妻を「頼りになる」と回答しているのに対し、妻はたったの2割。逆に「頼りにならない」としている率が42%に達します。また、「生まれ変わっても現在の配偶者とまた結婚したいか」という問いに対しても、夫の6割は「イエス」と答えているのに対し、妻は3割にも満たない。ここにも、配偶者に一方通行で依存する夫の傾向が見てとれます。なんとも切ない話ではありませんか。

行きすぎた家族依存はかえって危険!

未婚化、晩婚化、少子化、高齢化、離婚やシングルマザー増加などは、それぞれ密接に関連した問題です。未婚者だけではなく、結婚したって誰もが「ソロに戻る可能性」があり、たとえ家族がいても安心はできません。家族の絆を信奉するあまり、家族だけが最後のセーフティネットという考え方に縛られると、やがて家族同士の共依存性を高め、結局は共倒れになる危険性があります。

拙著『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃―』にも書きましたが、ソロ社会とは決して孤立社会になるということではありません。ソロで生きるとは、山ごもりの仙人になることではないし、個々人が勝手に生き、他者とのかかわりを遮断する社会でもありません。

『超ソロ社会』(PHP新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

逆説的ですが、ソロで生きる力とは、むしろ、誰かとつながる力です。人は誰かとかかわり合いながら生きるものです。自立心とは、誰の力もいっさい頼らないことではなく、頼れる依存先を複数用意できることで生まれるもので、依存先がひとつしかないという状況の方こそ憂うべきです。

それは今後の働き方にもいえることです。30年以上もひとつの職場で勤めあげることは悪いことではありません。が、その先も人生は長く続きます。これから必要になるのは、退職後を考えたサードコミュニティと言うべき多様な関係性を構築する力でしょう。職場だけではない、家族だけではない、新たに人とのつながりを構築し続けること。ソロ社会における自立とは、そうした個人単位でのネットワークの拡充が求められます。

特に、家族のために仕事だけをひたすら頑張ってきた昭和なお父さんたちは、いまこそ意識を変える必要があるかもしれません。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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