「ノーシャンプー」生活は頭皮や髪に効くのか 立ちはだかる二つのカベ

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「メーカーが正しいシャンプー法を周知しないことに、根本原因があります」

国際毛髪皮膚科学研究所の井上哲夫所長はそう指摘する。シャンプーしたという人の頭皮をマイクロスコープで見ると、汚れが残っているケースが多い。

「洗い方が間違っているとどんなにシャンプーを変えても満足できない」(井上所長)

洗髪のポイント

洗髪のポイントは、手のひらで泡を立てること。そして頭皮を指の腹でもみ洗いすることだ。

先の坪井教授は「洗いすぎ」を問題視する。歴史をひもとくと、江戸時代の洗髪は月に1、2回。「シャンプー」という名の商品が登場したのが昭和元年で、記者が生まれた1960年代の新聞広告には「5日に一度はシャンプーを!」とある。毎日洗うようになったのは、ここ30年ほどのことだ。内風呂の普及と80年代の朝シャンブームが拍車をかけた。坪井教授は言う。

「診察する患者のうち6割は“洗いすぎ”です。一般的にシャンプーは週に2、3回で十分。私は週2回です。また、シャンプーをコロコロ変えるのもやめたほうがいい。かぶれやすくなります」

大事なのはシャンプー選びよりシャンプーとの「距離」だ。

「頭皮や髪の状態はひとりひとり違う。使い心地のいいシンプルなシャンプーをひとつ決めて、『適正な量と頻度』を見つけることです」(坪井教授)

この取材をきっかけに始めた記者の湯シャン生活も1カ月を過ぎた。ノープーとシャンプーの間のベストポイントをどこにおくべきか。頭のむずがゆさとの相談が続いている。

【記者とノープーの40日】
0日目 ノープーにトライしたいが、取材があると思うとなかなか踏み出せない。におったらどうしよう
1日目 湯シャンに初トライ。ふだんの「すすぎ」が洗髪。泡がないので、汚れが落ちたのかどうかよくわからない
4日目 髪に指が通らず「酢リンス」に挑戦。効果てきめん。においも指摘されず、以後はマストに
7日目 湯シャンにしてから髪がいつもむずがゆい。気温が上がるとかゆさが増してボリボリ
10日目 9日ぶりにシャンプー。髪が乾いたあとのシルキーな手触りに感動
16日目 冷え込んできたせいか、ムズムズが軽くなってきた気がする
24日目 大事な取材。こんな日はやはりシャンプー。頭すっきり、心もすっきり
33日目 フケが増えたのでは疑惑。紺や黒の服が着られない
35日目 ロレアルのノープー商品を試す。甘い香りに女子気分
40日目 ノープーは時短になるというが、頭がかゆくて毎朝洗わないと無理。数日に1回のシャンプーのほうがトータルでは時短になるかも。さて、どうする?

(編集部・石田かおる) 

AERA 2017年1月23日号

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