【産業天気図・銀行業】すべての業務が環境面で逆風受け「雨」降り続く。二極分化で地銀は再編進む一方、公的資金注入行は苦境脱せず
08年4~9月 | 08年10月~09年3月 |
2008年度は多くの銀行にとって冴えない我慢の年である。今年度は前半・後半とも「雨」が降り続けそうだ。
商品市況の高騰によるインフレ懸念で、一転、ECB(欧州中央銀行)、米FRB(連邦準備制度理事会)は若干の利上げモードに転換したが、実際には米国の景気後退でその影響が懸念され、利上げは続かない。こうしたなかで、日本銀行は利上げも利下げも出来ないこう着状態が続く。
利上げが続かなかったことで、貸出金のうち固定金利の比率が高い銀行は預貸利ザヤが縮小したまま改善が見込めない。市場連動の比率が高かったり、利上げ交渉力のある優良地銀も改善効果が一巡、預貸収支が伸びない。ごく一部の貸出金が高く伸びている優良地銀だけがボリューム効果で預貸収支が増える程度だろう。なおかつ、長期金利が急上昇し、その後の動きも不安定なので、債券運用で大きく稼げるという局面にはない。また、株式市場や為替市場も不安定なので、投資信託や変額年金の販売による手数料収益も伸びない。つまり、収益を稼げる要因がひとつも見当たらないのだ。
こうしたなかで、銀行の今09年3月期の利益見通しも軒並み、減益か横ばいと弱気なもの。メガバンクは07年度にサブプライム関連で大きな損失を出しているので、利益自体は上向くものの、実態は弱い。個別には三菱UFJフィナンシャルグループ<8306>はシステム統合の償却負担もあり、純益はほぼ横ばい。三井住友フィナンシャルグループ<8316>はメガバンクグループでは最もサブプライムの影響が小さく、海外クレジット関連のエクスポージャーも少ないが、純益は4%の増益程度。みずほフィナンシャル・グループ<8411>はさすがに07年度の海外投資関連損失が6450億円もあったため、利益は倍に戻るが、それでも、06年度の利益は下回る。
地銀では、年明けに、泉州銀行<8372>と池田銀行<8375>の統合、5月に荘内銀行<8347>と北都銀行<非上場>の統合が発表されるなど、再編が続いている。不良債権問題をいまだに解消していない第二地銀や地元の資金需要が鈍い地銀があるため、再編は今後も出てくるだろう。一方、千葉銀行<8331>、横浜銀行<8332>、静岡銀行<8355>などは攻めに転じており、地銀間の優勝劣敗の二極分化が進みそうだ。
株価が低迷して公的資金を抱え、外資系大株主の下で再建を模索する新生銀行<8303>、あおぞら銀行<8304>は当面、出口を見出せない状況だ。りそなホールディングス<8308>は公的資金2.3兆円のうち、早期健全化法3350億円の優先株返済に向けて当局と協議を開始したほか、普通株2937億円のうち144億円を提携先の第一生命が肩代わりで返済する。同グループの公的資金肩代わりを巡る再編の行方が注目される。また、メガバンク3行は、みずほが米メリルリンチ、三井住友が英バークレイズ銀行へ出資といった海外資本提携のほか、国内再編にからんだ投資が出てくることが予想される。
【大崎 明子記者】
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