100年人生に「定職・持ち家・引退」は不要だ! 「既成概念をぶっ壊す!?」緊急討論会

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尾原:過去を捨てられる人なら、年齢のハンディはないと思います。私の親父は医者でしたが、よく「若い医者は検査がうまいが、治療が下手。年寄りの医者は検査は下手だが、治療がうまい」と言っていました。円熟したクリエーティビティは、課題解決につながります。その業界で「治療」がうまい人、つまり課題解決ができる人が、生き残っていくのではないかと。

:将棋の羽生善治三冠が経験について言及していて、「経験を積むことによって不必要な情報は捨てられる。無駄なことを省くことができるというのが本当の意味での経験を生かすということ」と語っていました。多くの人は、経験を積み重ねると、学習して多彩な技を繰り出せるようになると考えているが、正確には経験を積み重ねることで、むしろ無駄なものの捨て方がうまくなると思うんですね。労多くして得るものが少なかったときは、別の手に切り替えることにしっかりと集中できる、それが経験だと。経験を積むことで躊躇なく新しいチャレンジができるというわけです。経験がないからと、最初からあきらめて動かない人もいますが、経験という言葉の意味合いを変えたほうがいい。

「ライフ・シフト」は全員すべきか

杉本:100年時代には全員が「ライフ・シフト」せざるを得なくなるのでしょうか、それとも生き方の新しい選択肢ができたのでしょうか?

イベントは大盛況のうちに幕を閉じた

:みんながシフトすべきかどうか。そういう考え方が出てきたときは、背景を考えたほうがいいと思うんですよ。そこには周囲に取り残されるとまずい、割を食う、という発想があるのではないでしょうか。まずいからシフトしようという発想だと、いずれまたまずいと思ってシフトしなければなりません。よく「どう変えたらいいでしょうか」と聞かれるのですが、そういうマインドセットでは一生幸せになれませんよね。自分の足で立ち、自分で選択すれば、世間からは「割を食っている」と言われても、慌ててシフトする必要もないわけです。

尾原:今までは親が決め、大学が決め、会社や業界が決める、というように、誰かが自分の価値を決めてくれた時代でした。でも、「ライフ・シフト」が起こると、何でも自分で決めなくてはならない。それは簡単なことではないと思うんです。大変な時代ですね。

:昔は結婚相手も親が決めてくれていましたからね。人間、弱いですから何かに頼りたいものです。でも、いい大学に入って、いい会社に入ったところで、果たして楽しい人生なのかどうか。人と比べて自分だけは損をしたくない、というエコノミックアニマル的な考え方は、なんだかさみしいと思うんです。周囲と比べてどうかではなく、自分で選んだことだからいいと言える、本当の意味での自立がこれからは必要だと思います。

杉本:本日は貴重なお話、ありがとうございました。

東洋経済新報社 出版局
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