就職市場に新展開、東北で始まる「地元志向」 新人育成に熱意ある地域の企業が狙い目だ

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進学だけでなく就職先も、北海道であれば札幌に、東北6県であれば仙台に集中しているのが現状です。全国から見た東京への一極集中だけでなく、さらに地方での地方中核都市への一極集中がある。地元企業や地域行政にとっては二重構造の若者の転出です。

人口減少に早くから直面してきた東北は、ある意味では、日本の社会問題が凝縮し、先取りしているエリア。しかし、だからこそ、いち早い取り組みが始まっています。

たとえばこんなケースがあります。宮城県石巻市で自動車のトータルサポート(販売、修理・整備、車検、板金塗装など)を行う、有限会社山内自動車の2代目経営者の山内正さん。9人の社員とともに東日本大震災以降も堅実に事業を行ってきました。これまで採用は専門学校を通じて募集する専門技能職だけでした。

しかし、大震災の影響もあってこのままでは新たな雇用が生みだせない、経営を考えられる人をきちんと育てたいと、2016年度生から大卒の新卒採用を始めたのです。石巻は、地理的に東北での一極集中都市・仙台に近く、求人活動では苦戦しかねない地域でありながら、無事内定者を2名出し、すでに学生たちの承諾も得ています。2名とも東北出身ではあるものの、石巻は地元ではなく、新たな転入者を生みだしたのです。

いまだ大変な状況が続く石巻で、人を育て地域活性に微力でも尽くしたいという経営者の思いと、大きな会社に入るよりも、育てたいと言ってくれる経営者のもとでいろいろ体験し、学び、成長したいと考えた学生の思いが合致した結果です。

経営者たちがタッグを組んだ

個人の奮闘だけではありません。宮城県気仙沼市では、地元企業11社が連携して採用と育成活動を展開し、2017年4月入社では11人の新卒採用を決めています。このうち2名は気仙沼出身者ですが、ほか9名は気仙沼以外からのいわゆるIターン就職です。

11社の顔触れは、創業170年の漁具販売店、冠婚葬祭企業、鉄工所などさまざまですが、経営者自らも参加して合同勉強会を開催し、精力的に情報交換を行っています。

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