「カジノ関連株」の上昇が危うい「3つの理由」 日本版カジノが成功しても手放しで喜べない

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カジノ関連株と言われる企業のほとんどが、パチンコ・パチスロ関連株でもある。カジノがスタートすれば単純にカジノで儲かるというイメージで買われているが、実際にカジノがスタートしたら、カジノは栄えても、パチンコ・パチスロ産業がダメージを受けることになりかねない。

パチンコ・パチスロ産業や公営ギャンブルがカジノによってダメージを受けないようにするには、日本版カジノのVIPルームで、射幸性を厳しく制限する規制を導入する必要がある。そうすると、日本のカジノは魅力ないという評判が、世界に広がってしまうだろう。

世界中で競争激化、開始も2020年以降

②世界でカジノが増え過ぎて競争が激化している

日本でカジノを作れば、海外から顧客がたくさん押し寄せると期待する向きもある。2007年以降にマカオでカジノ産業が急成長したことを受けて、アジアでカジノの導入ブームが起こった時は、日本でも、カジノ解禁の議論が盛り上がった。その時、すぐにカジノを開始すれば、日本でも成功する可能性は高かったかもしれない。

ところが、日本では、IR推進法はなかなか成立まで進まなかった。そうしているうちに、シンガポール・韓国・フィリピン・マレーシアなどアジア各国で次々とカジノが建設されていった。

その結果、あまりにカジノが増え過ぎて過当競争となり、近年、カジノの成長は止まった。マカオなどではカジノ収入が減り始めている。アジアだけでなく、米国でもカジノは競争激化で簡単に利益をあげられなくなってきている。

「日本でカジノを始めれば海外から顧客が大挙して押し寄せる」というイメージを持ちにくい状況になってきている。

③実際に国内でカジノが始まるのは2020年以降

IR推進法の成立により、カジノを含む統合リゾートを解禁する方針が決まった。ただ、実際にカジノを建設するには、具体的に細かいルールを定める「IR実施法案」を成立させる必要がある。その検討はこれから始まる。

どこにカジノを建設するか、依存症への対策をどうするかなど、まだ越えなければならないハードルは多数ある。実施法の成立後に建設を始めても、運営開始は2020年の東京オリンピックに間に合わない可能性が高い。

窪田 真之 楽天証券経済研究所長兼チーフ・ストラテジスト

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くぼた まさゆき

くぼた・まさゆき 1984年慶応義塾大学経済学部卒業。大和住銀投信投資顧問などで日本株ファンドマネージャー歴25年。2012年2月より現職。企業会計基準委員会の専門委員・内閣府「女性が輝く先進企業表彰」選考委員など歴任。著書に「投資脳を鍛える!株の実戦トレーニング」(日本経済新聞出版社)、「クイズ 会計がわかる70題」(中央経済社)など多数。

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