「カジノ関連株」の上昇が危うい「3つの理由」 日本版カジノが成功しても手放しで喜べない

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すでに、パチンコ・パチスロ・公営ギャンブル・宝くじなど、ギャンブル産業は競争激化のあおりを受けて、売り上げが頭打ちになっている。どのギャンブルも、生き残りを賭けて、あの手この手で顧客呼び込みのアイディアを競っている。

競争激化に苦しむギャンブル産業の売り上げを増やすのに、手っ取り早い方法がある。射幸性(ギャンブル性、射幸とは偶然に得られる利益や成功をあてにすること)を上げることだ。賭け金に対して何倍の賞金が得られか、その倍率を上げる、あるいは、1回の賭けで得られる賞金の上限を引き上げていくことが、射幸性を強めることにつながる。すると、賭けに参加する顧客が増えることがわかっている。

射幸性を強めると、勝つ人の賞金は大きくなる一方、負ける人の数は増えることになる。それでも、射幸性の高いギャンブルに人は向かうことがわかっている。ギャンブルを楽しむ人よりも、生活を賭けてギャンブルをする人が増えていく。ギャンブル依存症の問題も起こる。

それでも、売り上げが伸び悩むようになって、ギャンブル業界では射幸性の引き上げ競争が起こっている。たとえば、競馬では、「3連単」(1着・2着・3着となる馬番号を着順通りに的中させる投票法)という射幸性の高い投票方法の人気が急速に高まっている。宝くじでは、売り上げが伸び悩むようになってから、1等・前後賞を合わせた賞金額を、3億円、ついには10億円と引き上げることで、射幸心をあおる戦略をとっている。

パチンコ・パチスロからカジノへ客が流れる可能性

パチンコ・パチスロは、依存症対策として射幸性に規制がかかっている。射幸性を高めると需要が増えることがわかっているが、パチンコは新機種の認可を受ける段階で、射幸性の審査を受けるので、単純に射幸性を高める戦略は取れない。最近は、ストーリー性を高めて、集客を高める戦略をとっているものの、射幸性の操作ほどの効果はない。

パチスロには、高い倍率を設定できるものもあり、射幸性を求める顧客の受け皿となることもあるが、常に規制が後から追いかけてくる可能性がある。

ここで、カジノがスタートしたら、どうなるか?カジノは、ファミリースペースでは、射幸性が過度に高いゲームは排除されるはずだが、たとえばVIPルームでは、かなり大きな賭けができるようになるだろう。パチンコ・パチスロの射幸性を制限したままで、カジノのVIPルームでそれを上回る射幸性を許容すれば、高い射幸性を望む顧客は、これらから離れ、カジノに向かうと考えられる。

カジノは、パチンコのように、全国津々浦々に作られるわけではないので、全国にちらばるパチンコとは競合しないとの見方もある。それでも、時間をかけて、より射幸性の高いギャンブルに人が吸い寄せられる流れは出ると考えている。

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