週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資

「ダウ&日経平均2万」突破前に波乱はあるか 今の市場は「欧州の影」を無視しすぎている

7分で読める
  • 馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト
2/3 PAGES
3/3 PAGES

また、イタリアの大手銀行であるモンテパスキ(モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ)が、財務体質強化のため増資を計画していたが、投資家の応募が少なかったため、増資を断念すると公表した。だからといって、欧州経済や欧州の金融システム全般が悲惨な状況に陥るわけではなく、イタリア政府が公的資金でモンテパスキが発行する新株を購入し、救済することとなるだろう。

ただし、EU(欧州連合)内では、「ベイルイン」のルールがある。イタリア政府はモンテパスキ銀行の外部者であるため、そうした外部者が資金を注入することを、「ベイルアウト」と呼ぶ。EUでは、ベイルアウトを無制限に認めると、国民の税金を銀行に注ぎ込んでいるという批判を免れないため、ベイルアウトする際は必ずベイルインする、すなわち銀行の内部者も負担しなければならない、と定めている。

具体的には、銀行の内部者、すなわち株主や債権者も、負担をすることとなる。その負担の規模は、銀行の総資産の8%に相当する額だ。まず株主が保有する株式が、8%に相当する額まで減資されていく。100%減資、すなわち既存株式が紙くずになるまで削っても、8%に達しなければ、次に劣後債が削られていく。それでも十分でなければ、次に普通債に手が付けられる。

銀行の劣後債(CoCo債(Contingent Convertible Bonds、偶発転換社債)と呼ばれるものが多い)は利回りが高いため、欧州の投資家が多く保有しているだけではなく、たとえば日本を含む他国の金融商品にも組み込まれている。モンテパスキ以外の欧州銀行の劣後債にも懸念が広がり、市場で大きく売り込まれれば、悪影響の波及は大きいかもしれない。

1月下旬までは「揺り戻し」を警戒

繰り返しになるが、だからといって、欧州経済や欧州の金融システム全般の健全性が、著しく損なわれるわけではない。ただ、足元の世界市場は、述べたような欧州の影をあまりにも無視しすぎている。また、日米株式や米ドルなどを買い上げてきた投機筋は、クリスマス前にかなりの利益が出たはずだ。投機筋は、買いで儲かって、その後に相場上昇の勢いが、下落に転じなくても止まってしまえば、次は売りで儲けようとするだろう。

このため、まだ当面は、内外株価下落の恐れが強いと予想している。そうした流れの中で、日経平均株価の今週(年内最終週)のレンジは、1万8700~1万9500円を予想する。

短期的な内外株価調整シナリオを繰り返して主張しているわけだが、そうした調整は、世界の経済実態などに、何かとても悪いことが起こるためではなく、買われ過ぎの剥落によるものだ。トランプ政権が実際に発足する1月下旬までは、「良く考えてみると、この政権は本当に大丈夫なのか」と、浮かれた期待から警戒に振り戻る局面が生じ、内外株価はその時点までは下押しすると予想する。

しかしその後は、世界の経済実態はじわりとだが持ち直しつつあることは事実なので、「振り返ってみれば、2016年6月のブレクジット時が最安値だった」ということを、大きな流れとして確認するような株価上昇展開となるだろう。2017年全体の展望は、次回以降どこかで語ることとしたい。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象